第3話
婚約者のみさおを非常に気にするような男が
――例え、親友であれ
――しかも一人ではないのだ
――複数の男と会わせるだろうか?
確かに猟の楽しみというのはあるかもしれない。しかし、猟なんて他のところでもできるだろうに、とは想う。
まるで王太子自身が、エリザベトのみさおが奪われるのを望んでいるよう。
通常なら、考えすぎだと想う。
しかし乙女ゲームの世界では、断罪イベントは欠かすことができない。
王太子とヒロインが結ばれるには、悪役令嬢であるエリザベト、つまり私が断罪処刑されなければならない。そして、その前段として、このゲームの場合には、まずは婚約破棄がなされなければならない。
エリザベトがそれをなされた理由。それはみさおを守らなかったから。これは断罪イベント発生の前提条件とさえ言って良かった。
ただ私が転移したエリザベトは、恐ろしく身持ちが堅い。彼女は、このゲームをプレイする女子の嫉妬をあおるためだけに、絶世の美貌を与えられた。これを武器に男性を攻略しようとすれば、どうなるか?
男たちを手玉に取り、更にはひざまずかせることもたやすいはず。極端な話をすれば、そのプライドを折り、その足指に口づけさせることさえ、むずかしくないだろう。
にもかかわらず、恋人の影さえ見えなかった。実際、ラブレターは1通も見つからなかった。これは、乙女ゲームにとって、最も不都合なことに他ならない。
このエリザベトに、いかにみさおを守れなくするか?
そこで私は想わざるを得ない。強引に奪われても、同じではないかと。
そして王太子が、それを望んでいるとしたら?
そんな恐ろしいことがあり得ようか?
本当に恐ろしい。
王太子が、他の男、しかも複数の男に無理矢理エリザベトのみさおを奪わせるなんて。
考えるだけでおぞましい。
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