第4話

 私は自室に戻った。ここで目が覚めるのが一番いい。乙女ゲームでは、悪役令嬢は決まって断罪される。実際エリザベトもそうであった。


 王太子という婚約者がありながら、その婚約者の親友たち――あくまで、『たち』である。つまり一人ではない――と逢い引きを繰り返し、最期にはそれがバレて、婚約破棄を告げられる。


 そこで怒り心頭に発したエリザベトは、敵国の皇子と密通する。そして公爵領が両国の国境沿いにあることをいいことに、そこに敵軍を導き入れ、そのまま王府に攻め上らせ、母国を滅ぼす計画を立てる。当然その目的は王太子とそれを献身的に支えるヒロイン、召し使い上がりの素朴な娘リリーを殺すことであった。


 ただ実行前に計画がバレてしまい、王太子に先手を打たれてしまう。国軍が公爵領に進駐し、敵国との国境は封鎖される。そして捕えられたエリザベトはギロチンにて処刑されるのであった。


 冗談じゃない。

 まさにここが潮時しおどき

 といって、どうやれば目が覚めるのか分からない。

 手をつねってみる。

 覚めない。

 もっと強く。

 (イッタイんだけど)

 というだけで、覚めない。

 しょうがない。

 覚めるのを待つことにする。

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