第4話

俺は家の玄関の扉をそっと開く。

モンスターとの遭遇を気にしているからだ。


あの2人の言うことが本当なら、もうこの先はいつもと同じ風景に見えるだけの別世界だ。

用心するに越したことはない。


しかし、俺がこんなに用心しているって言うのに、天使と悪魔は俺が開いたわずかな玄関の扉の隙間から思いっきり飛び出して叫ぶ


「やったー!堂々と外に出られるぞー!」

「モンスターと戯れよう!!」

「お前ら、堂々と外に出るんじゃねー!

他の人にバレたらどうすんだよ!」


俺は慌てて飛び出した2人を掴むと、上着の中のポケットの中に詰め込む

その中で二人はモゴモゴと動きながら訴える


「RPGの世界だから大丈夫だよ!」

「モンスターいるんだから、天使も悪魔も妖精もいるよ!」

「そんなまさか……」

「嘘だと思うなら、証明してあげるから外に出してよ!」


俺はそんな悪魔の彼女にそう言われてポケットの中から解放する。

彼女たちは宣言通りその辺歩いている通行人たちの目の前を飛ぶ。


当然、元々がフィギュアだから人前に出れば姿は見られるから、

周りの人に驚かれないよう、部屋から出るの禁止、

俺以外の人間がいるときは人形のふりをするようにと言い聞かせていたのだが……


「あら、かわいい天使と悪魔さんね、どこから来たの?」


驚くどころか普通に声をかけられている

彼女たちから、誰が飼い主なのかを聞いた通行人は、俺の方を見て会釈をして、

そのまま歩いてどこかへいってしまった。


「本当だ、妖精にもモンスターにも何にも反応してない…」


なるほど、システムが変わってるってこう言うことか。

マジで記憶が変わってんのか……


「だから言ったでしょー」

「もっと信用してよー」

「んなこと言ったって、夢みたいなこと信用できるかっての」


いくら窓の外見てモンスターがいたからって、目の錯覚の可能性もあれば幻覚の可能性だって捨てられない。


「異能で散々フィギュア動けるようにしといてよく言うよね〜」

「非日常的な能力は今日始まった物じゃないのにね〜」

「そうだったな、ごめんな!」


俺は投げやりに二人に謝る。

確かに、こんな世界になる前から非日常的な力が俺にはあったな!

というか、その能力があったおかげでこうなっちまったんだけど……


やっぱ早く元の世界に戻さないとな……。

俺のせいでこうなっちゃったわけだし。


「だったら、さっさと出かけてラスボス倒してクリアするか。

外出て大丈夫そうだし」


俺は意を決して外に出ようとしたのだが、天使と悪魔が俺のことを止める。


「武器忘れないでね」

「今は外、安全ではないから」


あぁ、そうか、モンスターはいるんだもんな。

手ぶらで言ったら襲われるってことか。


「あれ、でもさっきの通行人、なんも武器持ってなかったよな。

実はそんなに危なくないんじゃないのか?」

「「メリケンサック持ってた」」

「あ、はい。」


俺は二人にそう言われて、家の中にある武器を探す。

とは言っても、そんな武器なんて何にも……


「武器っつったって…せいぜい子供の頃使ったバッド…」


俺は家の戸棚の中から子供の頃使っていた玩具箱を見つけてその中を漁ると、

そこにはプラスチックでできたバッドの代わりにこんな物が入っていた。


「なんだこれ!なんでバッドに釘なんか刺さってんだよ!」


言うなれば、節分の時に鬼が持ってる棍棒に近い。

いや、棍棒を持ってるのはナマハゲか?


とにかく変わり果てたバッドを持って俺が困惑していると、また天使と悪魔が口を出す。


「システム変更に伴い、ものが変わってるよ!」

「ゲームの世界にないものは、この世界にある別のものに変わってるの」

「この世界に、野球はないのか?」

「ゲームの中に野球がないなら」

「この世界の中にもないよ」


じゃあねーな……

こいつらが言ってるゲームが俺のやってたゲームのことなら。

あの世界で野球があった描写はひとつもなかったもんな。


「「さあ、それを使って、敵を倒してみよう!」」

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遊んでくれないので、いたずらで世界をRPGにしましたby元フィギュアの天使と悪魔 つきがし ちの @snowoman

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