分岐 食事

すごく短い。三章のとある話からの失敗の話。

あまりにも短いしどこに挟めばいいか迷ったので、次章の次回嘘予告もどきとしてここに。ミニミニばっどえんど。ちしおがぶしゃー!





 片岡アルカはその光景から目を離せなかった。



「あ……あ、ぁ」


 雨が降る。月の光が届かない厚い雲はどこまでも広がり、地上を、街を、人間を、異形すらも大粒の雨の下で同等に濡らしていく。継片昴生も、織部菫だったものもまた同じ。


「な、ぜ、どうしてだ、どうして……ッ! 君が僕を庇う理由なんてどこに……織部、織部!」


 悲痛な叫びと共に昴生は水浸しの地面に落ちた織部菫だったものを抱え上げた。応答はない。するための頭がそれにはない。断ち切られる前に残った彼女の中の電気信号が、微かに指先を痙攣させる。

 頭から胸部が抉り取られ、上半身と呼べる部分はかろうじて皮と肉で繋がっている片腕と腹部だけ。それに纏わりついている布が菫の着ていたレインコートである事が、現実を知らしめる。それが、菫の遺体だという、おぞましい事実。


「うまい」


 歓喜に震える声が響く。


「若い女は柔らかくうまいな」「肌も髪もなめらかで舌触りが良い」「うえええいやぁああ」「悪趣味! 悪趣味!」「そう言って誰も食事を止めないじゃないか! やはり大義などない! 所詮食事なんだ!」「もう終わりだ」「終わり終わり終わって終わった我らが始まるのです」


 濁流の声が聞こえる。泥と汚水とヘドロとカビとゴミと吐瀉物と穢れが、少女を咀嚼し飲み下す。けれどそれには消化する腹は無く、べしゃ、ぐしゃ、と濡れた地面に濡れた何かが撒き散らされる。

 それを間近で見ている昴生は、動かない。雨空を仰ぐように虚空を見上げる頭に手を添えているだけだ。


「あぁ……そうか、そうだった、また間違えたのか、まちがえた結果が、こんな……今更、気付いた程度で、思い出したところで、何の意味が、生き残ったところで、」


「つ、ぐ」


「――つかれた」


 魂を吐き捨てるような言葉を最期に、継片昴生が齧り取られる。残り物同士が寄り添って地面に倒れ込んだ。

 ごりごりと、骨が折れる。ぐちゃぐちゃと、肉が潰される。そして吐き捨てられるように濡れた何かの山が増える。


「すみれ、つぐかた……」


 ノイズが距離を詰めてくる。


 それをわかっても、わかっていたところで、今更。意味があるのだろうか。だってこれは、食物連鎖のようなものだ。自然であることを、あるべき姿であることを、片岡アルカに否定する術はない。守りたかった人がいなくなってしまった今は、もう。







片岡アルカ>アイディアロール (1D100) → 00 ファンブル! もう頭オッペケペー!

織部菫  >庇うロール成功! ダメージは67! 体力残り-57! ワォ、ずたずた!

継片昴生 >秘匿ハンドアウトによりSANチェック自動失敗! 永久的狂気に到達! ついでに敵の攻撃を避けられません!


おめでとう! 君達の運命は共に! 全滅!



次章『嗤う鬼』、よろしくお願いします!

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