おまけ
おまけ 『基礎魔術』講座
ずっと会話文
「魔術は大まかに分けて二種類ある。始祖アーノルドが作り出した基礎魔術、その後魔術師が作り出した追従魔術。この二種の大きな違いは、術を構成する仕組みへの理解の有無だ」
「もっとわかりやすく言って」
「……基礎魔術は呪文を覚えるだけでいい。追従魔術は一つ一つ術への理解が必須だ。具体的に言うと本を一冊丸暗記する。君が織部にかけた〈
「〈
「わたしにかけてくれた痛みが鈍くなるやつだね」
「あれから重ね掛けもしてないけど、痛くない?」
「うん、大丈夫。ありがとう」
「〈
「なんか聞いたことあるな」
「あ、昴生くんがあのライオンっぽいのにかけてたよ」
「あー、あん時か。なんでわざわざ使ったの?」
「まず覚えるべきものを覚えてから不要な情報を入れろ」
「〈
「諸説、ある? なんかこう、効果が違ったりするの?」
「バリアとか無敵状態みたいなやつ? でもどっちも同じもんだよね」
「バリアだと昴生くんの盾なイメージだけど、無敵状態だと、んー……攻撃は受けてるけどダメージゼロみたいな?」
「織部のイメージに沿うなら、〈
「うーん……シージャックは偶然かもしれないけど、呪いなら検証出来たりしない?」
「さ、さすがに実験で呪いとかやばいでしょ」
「やっぱり? 危ないから出来なかったのかな」
「危険性もあっただろうが、まず呪いをかけたと言っていた術師が作り出した呪いの術を後世に遺さなかった。そもそも呪いに関する追従魔術は一族秘伝が多いとされている。例え検証されたとしても、情報が回ることはないだろう」
「話の腰を折っちゃうんだけど、追従魔術は秘密にされてるものと、広く公開されているものがあるの?」
「そうだ。追従魔術は世襲によって一族秘伝のものが大半だとされている。以前も言っただろう、魔術師にとって技術は知的財産だ。よほどの事がなければ開示する理由はない。公開されているのはほんの一部だ」
「ちなみに、どんなよほどの事があるの?」
「継承させる子孫に恵まれなかった事例が多い。もちろん、絶家によって失われた追従魔術も多いだろう」
「そっか……ご先祖様が大事にしてきたものがこの世から無くなっちゃうくらいなら、使ってくれる誰かがいたほうがいいもんね。多いってことは、それ以外の理由もあるの?」
「ある。君達が遭遇した使い魔を作り出す〈使い魔の創造〉がそうだ」
「わあぁ、使い魔! なんかすごそうなのに、秘密にしなかったの?」
「術を編み上げた魔術師は、『自分以外の魔術師がどんな使い魔を作り出すのか知りたい、見たい、触りたい』というとんでもない理由で自主的に広めたそうだ。時代によってそういう天才的な変わり者がいた」
「……なんか、科学の歴史でもそういう話あるけど、魔術師の世界でもあるんだね」
「〈
「へーなんか急にふわっとしてるっていうか、これまでと違って平和な感じだ」
「うん。たまに眠れなくなってつい夜更かししちゃう事あるもんね。自分にもかけれたりするのかな。いいなぁ……わたしも魔術使いたい」
「お泊りの時は私がかけてあげるよ!」
「片岡は生物が眠る過程をわかっているのか?」
「ん? んんん、いや、知らないけど……起きてたらそりゃ眠くなるもんじゃないの?」
「眠る時、脳や脊髄の神経、血圧への変化がある。通常は眠るまでに時間をかけて緩やかなものだが」
「……なんか、聞いたことあるんだけど」
「〈
「血液を循環させているのは心臓だ」
「あぁー、心臓かぁー……」
「ちっとも平和なやつじゃねぇ!」
「〈
「契約魔術?」
「これは一つの物を複数の人間が同時に求め、争いが避けられない場面で使われる」
「なんか、今までの中で使う機会なさそうな魔術だね」
「そう思うなら歴史の教科書を開いてみるといい。戦争でも合戦でも内乱でも、いくらでも確認出来るだろう。これほど大規模、大人数の争いは稀だとしても、個人同士であれば争いはいくらでも起こるものだ」
「でもその魔術を使ったからって、争いがなくなるわけじゃないじゃん」
「実際に使ってみればわかるだろう」
「……ん? 私と継片で喧嘩するって話になってる?」
「喧嘩と呼べるほどのものではない。織部、何か片岡が欲しがりそうな景品に心当たりはあるか」
「え? うーん……」
「これ、とかはどうかな」
「……プリン?」
「プリン。とろとろでおいしいんだよ」
「はい! はい! 頑張ります! スポーツマンシップに乗り上げて正々堂々と勝負することを誓います!」
「……やる気になったならいいが、スポーツはしない。あと乗り上げるものでもない」
「え? じゃあ何すんの?」
「ではジャンケンで」
「おっけ。簡単だしわかりやすいね」
「プリンの所有権は勝者へ、勝負内容はジャンケン。異論はなければ僕に術をかけろ。君には僕からかける」
「ん? わかった。〈
「〈
「じゃあ、じゃーんけーん……」
「僕はグーを出す」
「ポ、へぁっ!?」
「……あ、昴生くんの勝ちだね」
「ずッ! ずるくない!? しかも出したのグーじゃないし!」
「禁止事項に嘘やブラフは含まれていなかっただろう。〈
「……なんか腹立ってよくわかんないけど、もうこの術は絶対に使わない」
「賢明だ。では片岡、試しにプリンに手を付けてみろ」
「へ? 私負けたけど食べていいの? じゃあいただき、……あれ? なんか、開けれないんだけど、なんで!?」
「敗者だからだ。実感出来たか?」
「なるほどね!? これ負けた方がズル出来ないようにするための魔術なわけか!」
「なんだか、魔術というか魔法ってもっとすごいもんだと思った。火がボォーとか、雷がドッカーンとか」
「片岡の感覚で魔術を行使した場合、焼け野原が広がるだろうな」
「そ、そこまでひどくはなんないでしょ!?」
「遊びのつもりで試そうとは考えないほうが賢明だ」
「でも、確かにちょっと変わってる感じする。漫画とかゲームとかだと火とか水とか、属性がついてるような感じだけど……えっと、話すこと、眠ること、痛みを抑えて、守るための術が基礎なんだね」
「なんか地味」
「でも生きていくのに便利っていうか、大事なことばかりだよね。アーノルドさんの『おまじない』、そういうのを考えて基礎魔術作ったのかな」
「どうなんだろうね」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます