統治者の死から、物語は始まる。
「次」を見据えて胎動する諸侯、貴族たち。
しかし彼らも、死した統治者も醜聞にまみれ、みずからの血筋を信じるあまりの振る舞いは読者にはいっそ、哀れで滑稽に映る。
だが、いずれ思い知ることになるのだろう。
彼らはもしかすると愚かな俗物に過ぎないのかもしれない。
けれど、みなそれぞれに手駒を有し、軍隊という名の暴力装置を手にした権力者たちなのだ。
まだ物語は滑り出したばかり。
この醜聞と滑稽さにまみれた葬送行進曲が、やがて煌びやかで華々しく優雅な血まみれの戦争交響曲に変わるのだろう。
その終曲のとき、だれが指揮棒を握っているのか、いまから楽しみでならない。