第3話小学生に命を刈られる

10歳以上も年下の異性からの力強く斜め上なことを乞われても、返事に困惑する俺。


「養えったって、それは……生活費に余裕があるってわけじゃ——」

俺はひとさし指で頬をぽりぽり掻いて返答をしようとすると、嘉谷の妹が遮る。

「その点は気になさらないでください……んしょっ、こちらで足るように同棲して来なさいって言いつけられてますので」

彼女が足もとに置かれたボストンバッグを開けるために椅子を下り、ボストンバッグを開けてごそごそと何かしらを取り出してダイニングテーブルに置く。

ダイニングチェアに座り直した彼女が、俺にダイニングテーブルに置いた薄い茶封筒を滑らせ、手に取るように促した。

「良いの?中身を見ても」

彼女がこくっと首肯したので、長形4号サイズのの茶封筒の中を覗く俺。

茶封筒の中には紙幣が三枚、収められていた。

「三万……妹さんって何歳いくつ?」

「9歳です。9歳になりました。小学三年生です」

「9歳……ねぇ。9歳、小学三年……かぁ。……渡しすぎだろッ、嘉谷母親ひとッッ!?」

「……あのぅヒサにぃっ、私のことをキミとか妹さんって言わずに名前で呼んでくれませんかッ!私には可愛い名前があるんですっ!」

不満そうに頬をむすぅーっと膨らませ、抗議してきた彼女。

こういうところはまだ年相応に感じて、一安心した。

「悪い悪かった、ゆ……柚有莉ゆうりちゃん」

「ありがとうございます……」

照れた表情を浮かべ、ぽつりとお礼を言う正面の彼女。

「照れるとか、やめて……」

彼女の照れた姿に抗体が無く、口を腕で押さえ、返す。

元恋人ちやに似た顔で、照れた表情されると、ヤバい。


破壊力が、強烈で……彼女は元恋人ちやではなく、妹の柚有莉ちゃんだ……堪えろ、抑えろ、俺。


「ヒサにぃに、初めて……呼んでもらえたから、つい……」


おっ、乙女みたいなときめいた表情は……やっ、めてェぇー……柚有莉ちゃん……グハッ!


小学生の女子に、いのちを刈られてしまった大学生の俺だった。

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