ファーシープと鋼鉄の少女③「大人」

それから数年の時が経ち、少女・アデルは大人になっていました。

木の棒を握っていたその手にはサーベルが握られ、ファーシープのソキウスと肩を並べて歩いています。


「メンバー集まらないね」

「しょうがないよ。私弱いし」

アデルは冒険者ギルドと呼ばれるその建物に到着する。

押し扉を開けて中に入ると、忌避の目がアデルたちに向けられてしまいます。


アデルは冒険者の中でも異端の存在で、ソキウスと仲間というだけでパーティメンバーが集まりません。

「今日はこの依頼にしようか」

「君がいいなら僕はどこでもついていくよ」


冒険者へと宛てられた依頼の一つを束からもぎ取り、受付へと持っていきます。

「……こちらは二人からとなっています」

「私とソキウスの二人じゃダメか?」


「いえ……では、えーよろしくお願いします」

苦虫を嚙み潰したような顔の受付嬢は渋々納得したような素振りでアデルを送り出す。

「じゃあ、行こうかソキウス」


「僕、あんまりあそこは好きじゃないや」

「私も……冒険者ギルドはそんなに好きじゃない」

依頼を受けたアデルとソキウスは草原へと歩みを進めていきます。


「今日の依頼は……薬草の採取だね」

「君が薬草を取っている間、僕が護衛をしよう」

「役割分担、だね。任せたよ」


見渡す限りの緑の絨毯が敷き詰められたここはトギー草原。

雄大な自然を楽しめる冒険者御用達の休憩スポットです。勿論、冒険者以外から見ると脅威となる生物も多く生息していてとても近寄りがたい場所なのです。


「ここはよく知っているよ。ここの草はスライムから染み出た養分が地面に溶け込んでいて草が美味しいんだ」

「じゃあ、スライムが出るってことだね」


アデルがソキウスの美味しい草事情を聞くのは数十回目、やれやれとしながら話をまとめるとソキウスはハッとした顔をする。

「そっか、スライム出るね」

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