ファーシープと鋼鉄の少女②「名前」

少女は草原に向かうことが日課となりました。

毎日草原に寝そべってはファーシープとお話をします。

「私、夢があるの」

「夢?」


「立派で偉大な冒険者になりたい」

少女は立ち上がって、手に持った木の棒を天に掲げる。

どうやらその恰好は冒険者の象徴、勇気の像の真似をしているようだ。

「かっこいいね」

彼の褒め言葉で少女はふふんと誇らしげだ。


「じゃあ僕は君の相棒になろうかな」

ファーシープは少女の隣に座り、一緒に決めポーズをする。

「いいね」

「僕、かっこいいかな」


決めポーズを終えた彼らは様々な遊びをしました。

かけっこ、ピクニック、戦う練習、かくれんぼ――

「見つけたー!」

「あはは、やっぱ僕大きすぎて全然隠れられないや」


どさりと生い茂る草に少女は倒れこむ。

同じようにどすんとファーシープも倒れる。

「疲れたねー」

「楽しかったね」


「そういえば、君の名前は?」

名前を聞いていなかったことに気づいたファーシープは少女に尋ねます。

「私アデル、羊さんは?」

「僕は名前なんてないよ、そういう名前を付けるのは人間だけだから」


「だったら私がつけてあげる」

アデルは少し考えこんだ後、ファーシープに告げます。

「じゃーソキウス!!」

「ソキウス?どんな意味なの?」


「相棒、って意味だよ」

「かっこいいね」

アデルはソキウスに向かって手を出す。

「よろしく、ソキウス!」

ソキウスはアデルのその手に前足をぽんと乗せる。

「うん。よろしくね、アデル」

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