第48話 エピローグ
翌日、日曜日。
三人で遊ぼうよ、と言い出したのは銀子だった。
わたしは断ろうと思ったのだけれど、いいじゃない、と賛成したのは妃乃。
歪な三角関係を作るきっかけになったのはわたしだとしても、これはまた随分と肩身の狭い思いをさせられそうだ。
一生許さない。妃乃は言った。
本当に一生許してもらえないかもな、と観念した。
「楽しいデートにしようね?」
「……うん」
妃乃がわたしの手を強く握りしめる。痛いくらいの強い愛を感じる。
ここは都心駅の改札前で、銀子の到着を待っている。
午前十時前には多数の人が行き交うけれど、ただの友達には思えない距離感で寄り添うわたしたちを気にする人はほとんどいない。
案外、昨今はこういう雰囲気の女子二人を見ても、へぇ、くらいにしか思わないものかな。地域にもよる?
しばし待つと。
「よっ! 朝っぱらからお熱いねぇ、お二人さん」
妙に明るい声で挨拶してきたのは、銀子。……リアルで会うときは、青葉って呼ぶ方がいいかな。
「昨日の夜からずっとこんな感じ。まだ熱が引かないの」
妃乃がにっこり笑顔で応える。
青葉も大変清々しい笑顔を称えている。
「そっかそっか。だからって公衆の面前で過激な真似するなよ?」
「公衆の面前ではしないけど……あなたが望むなら、見せてあげてもいいよ? 瑠那が可愛く鳴いているところ、見たくない?」
おいおい。
勝手に人を見せ物にしないでくれよ。
あれは妃乃専用の顔だよ。
「んなもん見ないよ。見られたい趣味でもあんの? ちょっと瑠那には合わないんじゃない?」
「知らないの? 瑠那って結構見られたがりなんだよ? ね?」
妃乃。一体なんの同意をわたしに求めているんだい?
「わたしが全部見せていいと思うのは、妃乃にだけだよ」
「あら、そう? ふふーん。嬉しいこと言ってくれるのね」
妃乃が、青葉に見せつけるようにわたしを抱きしめる。うりうりと頬ずりしてくる。
嬉しいけど、すごく気まずい。
「公の場でサカるなっての。分別のない猿か」
「そうねぇ、流石に私も恥じらいはあるから……。瑠那。ちょっと、今から休憩でもしてくる? 近くにそういう場所、あるんだよ?」
「……大変魅力的なお誘いだけど、そういうのは家でたっぷりできるからいいじゃん」
「それもそうね。昨日も素敵な夜だったもんね」
ちっ。
青葉が不機嫌さを隠さない舌打ち。
……わたしが招いたことだけど、この応酬、いつまで続くの? ガチで一生とか?
マジかー。
二兎を追って、随分と不純なところに行き着いたものだ。
「……とりあえず、行こうか。いつまでもたむろってたら通行の邪魔になるし」
「そうね。私、瑠那の行くところならどこへでもついて行く」
「……うん。ありがとう」
「なんだそのキモいキャラ。瑠那がドン引きしてるじゃん」
青葉よ。妃乃を余計にあおらないでおくれ。
「……ふん。負け犬がどれだけ
「好きなだけ言ってろ。そのうち性格の悪さに愛想尽かされるだけさ」
いたたまれない思いを抱えながらわたしが歩き出すと、二人が両サイドに並んでついてくる。
妃乃は、わたしと腕を組んで。
青葉は、手の甲が触れそうな距離感で。
両手に花だけど、どっちも鋭利な棘のついたバラなんだよなぁ。
この関係、これからどうなっていくのやら……。
わたしのわがままが発端だから、わたしがちゃんと導かないといけないよね。
上手くたち振る舞える自信はないけれど、そんなことも言っていられないのはわかっている。
わたしの全力でもって、妃乃と青葉を幸せにできるように、頑張っていこう……。
「ふふふ」
「ははは」
両サイドから聞こえる笑い声に、胃の辺りがきりりと痛んだ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ここまでお読みいただきありがとうございました!
ひとまずはここまでで終わりの予定ですが……続きを読みたい人っているんでしょうかね?
コンテスト用では一区切りとなりまして、もしかしたら続きも書くかも? というところ。
百合は書いていて楽しいので、また何かしら書いていくと思います。
カクヨムでは比較的マイナーな百合好きさんに楽しんでいただけるよう、頑張ります。
では!
《百合》わたしの好きな人は心が読める魔女だったらしい。わたしの妄想が全部ダダ漏れだったとか恥ずかしすぎるけど、いっそのことあえて見せつけてやることにした。 春一 @natsuame
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