小寒




 灰を塗した白の空間に黒の星が落ちた。

 時に火球となって、時に流れ星となって、時に塵芥となって。










 あいつに似た化け物が、脱け殻が、幽かに銀朱を発光する。

 深い銀朱の涙を、血をか細く垂れ流す。


 これで終いだ。


 鈍臭く伸ばされる手を掴む。

 握り潰す勢いで。

 否。

 実際に握り潰している。

 崩壊の音がした。

 乾き細かな亀裂が走るペンキの音だ。

 誰も気づきはしない仄かな。


 必死なおまえは不要いらない


 おまえは言うだろう。

 互いに自堕落だったからこそ共に居たのだと。

 そんな顔をしているおまえは。

 こんなに強く求めるおまえは不要と。


 悪かったな。

 悪い。

 おまえが生きたいと思っていないのは知っている。

 知っているのに、繋ぎ止めた。

 俺が生き易くする為に。

 ああ、全部俺の為だ。

 おまえの為だなんて、口が裂けても言えない。

 生きる理由を教えろと言うのならば。

 俺の為に生きろと。

 身の毛がよだつ事しか言えない。




「俺に殺され続けるのにも嫌気がさしただろう。一緒に帰ろうや。帰って、死んだように生きようぜ」

「そう言えば、俺が一緒に帰ると思ってんのか?」

「ああ?いや。断るだろうけどよ、宣言だけしとく」

「………もうおまえに追いかけられるのはうんざりだ」

「おう」


 強くにぎられていた手を追い払って先へ進む少年の後を、少年の幼馴染は追った。

 がらになく、満面の笑みを浮かべて。











(2022.12.31)


    

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宵の一刻 藤泉都理 @fujitori

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