後日談 人畜無害兼マンガ原作者兼大使

「…確かにお預かりしました」


「いつもご苦労さま」


 すでにお忘れとは思いますが、実はマンガ原作者。その僕こと葛城天かつらぎてんの執筆原稿が入った封筒を手に、郵便配達員さんは去ってゆきました。


 ふ〜っ…と一息。


「さて、テレビでも見ようかな」


 やがて玄関からリビングに戻った僕は、まもなくコタツに入るや、その台の上からテレビのリモコンを手にしました。


 そして電源オン。すると、某女優さんを起用したシャンプーのCMが、はたと僕の目に耳に入ってきました。


「艷やかなショートボブ…と、そういえばウメコさんは、どうしてるかな〜」


 実は、あれからクラウドファンディング制により、晴れてダンガル帝国が復活。ウメコさんともども皇帝モロ1世が、あらたに祖国を打ち立てたのは、かつては惑星とされていた、あの冥王星内です。


 また、それと時を同じくして、その『ネオダンガル帝国』と地球との間で、平和条約が締結。双方の合同大使館なる施設が、ちょうど両星の真ん中あたりに置かれることになりました。


 それはそれは、1個の宇宙ステーション。木星と土星との間に、ぽつねんと浮かぶ、直径7、8メートルほどの球形です。


 そして、そこに常駐する大使につきましては、まず地球側から1名…って、なぜ僕なんですかっ!?


 そうなんです。モロさんウメコさんと親しいことを理由に、僕が国連(!)から任命され、いままさにこの宇宙ステーション内に住んでいる、というか住まわされているんですよ。これが。


 よって、いまや僕はマンガ原作者兼大使という、なんとも妙な立場にある訳です。


 ちなみに、先のような(緑色の肌をした)宇宙人の郵便配達員さんに原稿を渡すのも、もうすっかり慣れっこ。ネオダンガル帝国の技術を用いた星間郵便船とやらで、それを運べば、およそ数時間で地球の編集部へと届くようになっています。


 一方、当大使館にて僕と同居する、ネオダンガル帝国側の大使さんですが…


 これまた同国の技術を駆使して開発された、美少女型ロボット…なんて、このコタツの向かいに座ったきりコタツ固定タイプの上に、顔しか動かせないじゃないですか。予算不足だって知ってますよ。僕は。


『ドウシタノデスカ、テンサン。ソンナニナナコヲミツメテ…』


 その名も、ナナコ17(セブンティーン)。いちおーAI搭載にして、ポッと頬を赤く染める機能付き。あいや、そんなのいります? 大使に。


「なんでもないよ。ナナコちゃん」


 その(我が国に敬意を示した)和服姿のツインテール美少女型から、ふと逸らすと共に僕は、この球形の約4分の1を占める透明ガラスの向こうに目をやりました。


 当然ながら、今日もそこには宇宙の闇が広がるばかり。いやはや、気が滅入ります。


『キョウハテンキガイイノデ、ドセイノワガ、ヨクミエマスネー』


 んいや、もう何度も見ましたよ、ナナコちゃん。


 ふ〜っ、早く刑期…じゃなくって、任期(あと3年!)を終えて、地球に帰りたいですぅ〜っ…


       


                    おしまイ

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侵略者ヤマザキウメコ 七七七@男姉 @138148

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