生きよう。オタクの夢叶うこの世界で。

序盤は流行りのダンジョン異世界ものかと思いきや、読み進めていくと作者節が色々と炸裂していく。いい意味でちょいひねくれた構成、虫けらのように吹き飛んでいく人々、しかし終盤はまっすぐな愛のお話になっていって、読後感がさわやか。

個人的に結構一章のカップル好きなんですけど、彼らを対比として、カズナ達の戦い方切り抜け方に、「この楽しい世界でみんなで生きよう」というメッセージ性が感じられるのが良かった。設定的にカズナ達も結構ヒデェ事してるんですが(笑)、ヒロイン二人との関係性が恋愛だけでない素敵なものになっていて、ある種の災害というだけでない美しさ心地よさで感情移入がしやすかったです。異世界転移したらどうするか、っていう根源的な感覚が、災害の中生き延びた飯屋の人々(笑)と共に感じられたというか。

公募用という事でコンパクトにまとまっていますが、得意の異形描写と心情からバトルまでカッコイイ文章で楽しかったです。