第16話 セリア·クロファボール

セリア「本日はよろしくお願いしますね?」

ヘレン「は、はい!よろしくお願いします。」

リング内で二人は相対していた。

ヘレンは緊張した趣がある。

対してセリアの顔からは余裕を感じる。

セリア「あまり緊張しないでください。力を発揮できませんよ?」

ヘレン「は、はい。」

アリサ「それでは両者構えて!」


リーク「あのヘレンとかいう女はどれぐらいの実力なんだ?」

レイブ「ヘレンはかなりのセンスの持ち主です。幼い頃は大会とかにも出場して優勝してました。」

リーク「なるほどな…典型的な独学型か。さて、どうなるのか…」


ヘレン「あなたもグランさんと同じで素手なんですか?」

セリア「ええ、これが私に一番合っています。」

セリアの構えは握り拳を顔の前で右手を前に左手をその後ろに二段構えにしている。

ヘレンは取り敢えず形だけといった感じだ。


アリサ「では、始め!!」

開始の合図と共に物凄い轟音が鳴り響いた。

ヘレン「か…はっ!!」

セリア「…」

セリアの右ストレートがヘレンの腹を突き刺さった。

ヘレンは負けじと反撃するが、直ぐに腕を掴まれて背負い投げを食らわされる。

セリア「もっと速くできますよね?」

あからさまな挑発にヘレンは少しイラッときたが、冷静に距離を取る。

セリア「ふむ…このぐらいでは乗りませんか。まあ、良いでしょう。」

ヘレン(あまく見てた…噂とか聞いたことがないから知らないけど。これが、セリア殿下の実力!近接戦闘は不利。)

ならばとヘレンは遠距離からの攻撃を開始する。

ヘレン「鏡片刄きょうへんじん!」

氷柱よりも更に鋭い氷の刃がセリアに迫る。

セリア「確かに私はあまり遠距離戦は得意ではありませんが…」

セリアは最小限の動きで躱し、少しずつ距離を詰めてくる。

セリア「見切れないことはありませんね。攻撃は当たらなければどうということはないんですから。」


本来の世界線での彼女はサポート重視のキャラである。

光属性の回復能力を活かした戦い方が特徴だった。

しかし、彼女はグランという特異点と触れ合ったことで真逆のインファイターに変わったのだ。

その結果、彼女は独自の戦闘方法を身に着けた。


距離を詰めてヘレンの腹部に狙いを定める。

セリア(手のひらに光を凝縮、炎で更に熱を持たせる。)

セリア「体通熱波たいつうねっぱ!」


高温の光がヘレンの体を貫いた。

感じたこともない痛みと熱さにヘレンは倒れ込む。

ヘレン(あ、熱い…!体の中から焼かれる!)ケホッケホッ!


セリア「光は小さな粒子の集まりによって起こる波。目には見えなくても物質を通り抜けます。けど、この戦法は試合には不向きなんですよ。あんまり高温にすると焼け死んでしまいますから。」


手をポキポキと鳴らしながらヘレンに近づく。


リーク「透過現象を利用したガード不能の攻撃。彼女が強みはそこにある。いくら俺やグランでもあれを喰らえば内部から焼かれて深くダメージを負ってしまう。強いぞ、彼女は。」


セリア「あなたの肌に火傷跡をつけるのは私も本望ではありません。ギブアップを勧めますよ。」

ヘレン「…霜吹雪しもふぶき!」

息を吸い込み、白い煙を吐く。


セリア「目眩まし…ですか。作戦としてはありかもしれませんが、私には通用しませんよ。」


セリアの周りを五人の影が回る。

うち四人はヘレンが生み出した氷人形である。

維持に魔力を使わないが強さは本分身よりも劣る氷属性の分身である。


セリア(来るなら…右。)


右側から一人仕掛けてくる。


セリア「と、見せかけての上!」

上から攻撃をしてくる本体の首を掴み地面に叩きつける。

ヘレン「カハッ!!」

更に腕を掴んで組み伏せる。


セリア「悪くない戦法ですが、通じなければ意味はありません。機転も効くし、センスも認めましょう。では、そんなあなたならこの状況からどうすれば逃げられますか?」


ヘレンは開いてる左手で地面を凍らようとするが、セリアは腕をへし折る勢いで力を強める。


ヘレン「う、うぁぁぁぁ!!!」ギリギリ

セリア「ええ、ええ…そうするでしょうね?予測できる事をさせはしませんが。別にこっちの腕を凍らせてもいいんですよ?私の熱に耐えられるならですけど。」


ヘレンは目線をグランの方に向ける。

グラン「…」

予想通りと言わんばかりであんまり興味もなさそうな顔をしている。

ヘレン「っ!!」

それが悔しいのか顔を歪める。

脱出の為に背中に魔力を込めて氷の針を出す。

セリアは軽く後ろに飛んで回避する。


セリア「…」

ヘレン「はァ…はァ…」


今度はセリアは手を銃のように構える。


セリア「光線銃ピストルレイ。」


指先から光線が放たれる。

ヘレンはなんとか避けるが着弾した地面が溶けていた。


セリア「反応速度も中々ってところですね。まあ、こんなところで良いでしょう。」

ヘレン「え…がっ!!?」


セリアの姿が一瞬で消えたと思ったら首に少しの痛みがはしるとヘレンは動かなくなった。

立会人がヘレンに近づくと。


立会人「…気絶してます!戦闘不能とみなし!勝者!1年、セリア·クロファボール!」


セリア「ありがとうございました。」


静かに礼をして会場を後にした。

閃闘姫せんとうきそれが後の彼女の呼び名である。













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ゲームのモブが悪役の友になった話〜修行だけで強くなるモブの奮闘記〜 湯豆腐 @renrenperikan

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