芒野の武蔵野には、挽歌届く赤い月がよく似合う

冒頭から何やら怪しげな世界が続いてゆく。
 
「難解な霊障」とはいったい何だろうか。
幽霊などの怖い話は苦手なのに、一抹の不安と共に興味がそそられてしまう。読み進むにつれ、いくつか疑問が湧いてくる。
 
 
「十一月二十四日」「武蔵野中央公園」には何の秘密があるのか? いくつか作品の伏線があるらしい。
 
突然、八十年ほど前の世界にタイムスリップしてゆく。全ては、主人公の男が詠む弔いの歌の二十五文字に凝縮されてゆく。
 
タイトル「レクイエム」の意味が分かると同時に、謎も解けていた。きっと、芒野の影より臨む武蔵野の景色は、ゼロ戦の飛行機雲が浮かぶ赤い月であったのかも知れない。

武蔵野に悲しい歴史があったことを忘れていた。両手を合わせ、懺悔の念を抱いてしまう作品です。ありがとうございました。

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