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 夏休みが終わりに近づいた頃、ようやく旧家の片付けが終わり、がらんとしてしまった旧家は解体作業を待つだけになった。

 家具が無くなった各部屋。いつも祖母や曽祖母がいて一家の食事を支えていた台所も、物が無くなり時が止まったみたいに静かになってしまった。

 そして、あの手紙を発見した金庫は壁に埋め込まれた造りになっている為、取り出すのも困難なので、仕方なくそのまま家と一緒に解体されることになった。

 家族全員で一通り最終確認を含め旧家内を見て回った後、片付けが終わった報告をする為、曾祖父母、そして祖父母も眠っている父方のお墓にやって来た。


「親父がお袋とお見合いの後結婚までに交わしていた文通の束を見つけたよ。処分しようかまよったけど、これは俺が預かっておいてもいいかな。いつかそっちに持って行くからさ」


 父はそう言うとしっかりといつもより長く墓前に手を合わせ、しっかりと自らの意思を祖父母に伝えているようだった。



『…お前とのやり取りの手紙を見つけてしまうとは。だいたい何で処分しなかったのだ。とんだ恥晒しだ』

『あら、お父さんは処分しろなんて一言もおしゃらなかったですし、お父さんが使っていない金庫にでも隠しておけっておしゃっていたではありませんか』

『そ、そうだったか?』

『…まぁ、私は捨てたなかったですし』

『ん?何か言ったか?』

『いいえ別に。でも嬉しいではありませんか。息子夫婦や息子の友人の皆さん、孫たちが旧家を綺麗にしてくれて。そして私たちの思い出も見つけてくれて。何より息子夫婦や孫たちが揃って手を合わせてくれるなんて』

『まぁ、そうだな』


 

 僕は正直祖父が苦手だった。

 無愛想で、無口なくせに怒ると怖くて…でも今回の一件で、少しだけ印象が変わった。

 無口で無愛想。でも実は照れ屋で祖母の事が大好きという、ちょっと可愛らしい一面がある祖父。


 【完】

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時の欠片 - 祖父母が遺したもの - 橘花あざみ @ray-777

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