エピローグ 大好き

 付き合い始めてから、一か月後。


 付き合い始めた俺達は、朝一緒に登校するようになった。

 そして、今日もこれから一緒に登校するため、愛しの彼女である七海を待っていた。


「いー君!」

「なーちゃん!」


 なーちゃんが嬉しそうに、遠くから手をブンブンと振ってくるので、俺も手を振って返す。


「おはよう、なーちゃん」

「えへへ、おはよ。今日も大好き」

「俺も大好きだよ」


 そして、俺達はいつものようにお互いの唇を重ねる。

 好きと気持ちを伝えあってから、キスをするまでが朝のワンセットだ。


 少し前の俺なら考えられない日常だった。

 けど、なーちゃんがこれだけ可愛いのだから仕方ない。


「えへへへ……今日もかっこいいね、いー君は。他の女の子に、ちょっかいかけられなかった?」


「そんなわけないだろーウリウリ~」

「きゃっ! ちょっと、やめてよ、もーう、仕方ないんだから」


 口調とは裏腹に、なーちゃんは嬉しそうだった。

 ちなみに、いー君が俺で、なーちゃんが七海だ。


 付き合い始めた二人のあだ名というやつである。


「それより! まだ、さっきの質問に答えてもらってないんだけど?」


 頬を膨らませたなーちゃんが俺に再度、質問してくる。


 か わ い い。


「大丈夫だよ。そんなことなかったから。それに、ナンパとかされても、宇宙一可愛いなーちゃんがいるから他の女の子なんて興味ないよ」


「えー、もーう……いー君ったらー! でも、そういうところも……好き」

「なーちゃん……俺も好きだよ」


 そのまま、俺たちはまた唇を重ねる。

 ちなみにだが、学校近くということもあって、登校中の生徒にほぼ毎日、見られている。


 最初は恥ずかしかったが、慣れてしまえば、あまり気にならなかった。

 なーちゃん曰く、これで他の女子生徒へ牽制をしているらしい。


 どこまでも、独占欲が強いというかなんと言うか。

 ただ、これだけ独占欲が強いのなら清々しいものだ。


「あ、今日のグループワーク。私以外の女の子と一緒でしょ? ほんのちょこっとならいいけど、話し過ぎはだめだからね?」

「はーい」 


「もし、誰かがいー君に色目使ったら言ってね、私がそいつを……クシュン!」

「うん、クシャミで最後まで聞こえなかったけど、良くないことだけは分かったかな!」


 俺が密告するだけで、クラスメイトが一人いなくなる可能性があるのか。気をつけよう。


「あ、そうだ。今日さ、バイトの給料日だから、晩御飯食べに行かない?」

「うん、分かった。家に連絡しとくね。あ、そうだ」

「ん?」


「家にはいつ、挨拶に来てくれる? パパも早くいー君に会いたいって」

「お、おう……」


「もーう! 会いたくないの? ママには会ってくれたじゃん」

「いや、そうじゃないんだけどね……」


 俺となーちゃんが付き合うようになってから、なーちゃんの希望もあって、立花さんとなーちゃん母に報告さしてもらった。立花さんは泣きながら喜んでくれたのだが、それだけじゃなかった。


 俺だけコッソリ連れ出されると、『モヤシィ……お嬢を泣かしたら、分かってんだろうなぁ! 俺もお嬢の彼氏をコンク──いや、それはいいか』と言われてしまったのだ。


 その先は、怖すぎて聞けなかったとだけ言っておく。


 それから、なーちゃん母──美月さんにも、同じように祝福してもらいつつ、とある場所を無料でいつでも使えるフリーパス券をもらった。


 これは余談だが、龍宮寺グループは幅広い事業を展開しており、その一つにホテル事業があるらしい。こーう……お城みたいなホテルのね。


 そうなってくると、なーちゃん父はどんな感じになってくるのか、想像つかなかったのだ。


 怖くないといいんだけどなぁ……そんなことを考えていると。


「いー君ってば、私の事きらいなの……?」


 なーちゃんは、頬を膨らませながら、可愛らしくいじけていた。

 そんな拗ねてるなーちゃんも、か わ い い


「そんなわけないでしょ。もーう」


 ハリセンボンのように膨らんだ頬を指でつつくと、しぼんでいく。


「なーちゃんのためなら、火の中でも水の中でもついて行くに決まってるじゃん」

「いーくん!」


 パッと表情を華やかせるなーちゃん。


「じゃ、じゃあさ、今日、ご飯食べた後はどうする?」


 なーちゃんが上目遣いで、からかうように俺の瞳を覗き込んでくる。


「どうするって……そのまま解散?」


 なーちゃんが何を言いたいのか、なんとなく分かるけど、知らないフリさせてもらおう。頬を膨らませるなーちゃんも可愛いし。


「もーう! わざと分からないフリしているでしょ!」


 か わ い い。


「ごめん。ごめん」


 頭を撫でながら謝罪する。すると、なーちゃんは気持ちよさそうに目を細めていた。


「俺も友達の家に泊まるって連絡しとくね」

「うん、私もママに連絡しとくね」


 そう言いながら、なーちゃんが俺の腕を組んでくる。


「じゃあ、学校行こっか!」


 こうして俺達は今日も特別な一日を始めるのだった。


──────────────────────────────────────


 最後までお付き合いいただき、ありがとうございました~

 これにて完結でございます。

 圧倒的感謝!

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オタクの俺が間違えてラブレターを送った相手が、クラス最強のヤンキーだった~なぜか告白をOKした彼女に振られるために頑張るが、好感度が上がってしまう~ 光らない泥だんご @14v083mt

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