第7話 島民

それからは、毎日のすべてが新鮮だった。島に来て1週間が過ぎ、

この頃の私は島民の人たちと交流もしてみたいと思い始めていた。


この日、私はまだ行ったことがなかった波照間島の集落の方に行ってみようと思い、重おじいに自転車を借りることにした。


波照間島は全周約15kmと、頑張れば3時間くらいで回れるほどの距離だった。

私は勢いをつけて、自転車のペダルを踏み込んだ。島一周道路を走り出す。しばらくは、誰もいない道を一人、ひたすら自転車を漕ぎ続けた。8月の太陽が容赦なく私を照りつける。30分も漕いだ頃には、もうヘトヘトに疲れ切っていた。


しばらくして、目の前に1台の自動販売機が目に飛び込んできた。

私は思わず心の中で神様に感謝していた。


恐らくは日本最南端の自動販売機であるその場所で、私は水を1本買った。

本当は麦茶が良かったのだけど、売っていたのはさんぴん茶だったからだ。

聞き慣れない名前のそのお茶を私は民宿で飲んだことがあった。おいしいのだけれど、今のこの乾いた喉には麦茶が恋しかった。


自動販売機の脇に自転車を停め、水のペットボトルを開ける。そのまま、一気に半分ほど飲み干した私は、再び、自転車のペダルを漕ぎ出した。


途中、日本最南端の碑の前で写真を撮り、星空観測タワーにも行った。

波照間島灯台まで行ってから、再び、島一周道路に戻り、走り出す。


ようやく、島を1周走り終えた頃にはちょうどお昼時になっていた。

お腹が空いていた私は、島の中心部の集落へと自転車を走らせた。


しばらくして、私は1軒のお店を見つけた。看板に柔らかな字体で「おむすびや」と書かれたそのお店は、名前の通り、おむすびが売っているらしい。お店の中に入り、

ぐるりと見回すと、1つずつ丁寧にラッピングされたおむすびがいくつも並んでいた。おいしそう…ますます、お腹が空いてきた。


「いらっしゃいませ」


笑顔が可愛らしい店主さんは、若い女の人だった。


「あの、おすすめはありますか?」

「鮭わかめとベーコンおかかがおすすめです」

「あ、じゃあそれください!」

「ありがとうございます。初めてのお客さんですよね…ご旅行ですか?」

「はい。北海道から来ました」

「北海道!いいなあ」


お会計を終えた私は店主のお姉さんと話をしながら、店先のベンチでおむすびを頬張った。


「島のことも案内してあげたいんだけど、お店があるからごめんね」

「いえ、楽しかったです。ありがとうございます!」


お姉さんにお礼を言って店を後にする。


店を出たところで、波照間島に初めてやってきた日に見かけた子どもたちが遊んでいるのを見つけた。


「こんにちは。何してるの?」

「かくれんぼ」

「お姉ちゃんもやる?」

「うん」


それから、しばらく一緒になってかくれんぼを楽しんだ。


「ねえ、みんなはお名前なんていうの?」

そう

琉那るな琉歌るか

慧吾けいご

「お姉ちゃんは?」

「私は凪」

「凪ちゃん」

「ねえ、凪。木登りしよう!」

「えっ、木登り!?」


そう言うと、颯はあっという間に近くの木のてっぺんの枝までするすると登っていった。驚く私。さすがに木登りはできなかったけど、それから、しばらく島の子どもたちと一緒に遊んだ。


子どもたちと別れ、ニシ浜へ向けて自転車を走らせる。爽やかな風が心地良かった。

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夕凪 秋穂碧 @aioaoi

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