自他殺願望
@Hiragisan235
夜の山って怖いよね
自殺したいと考え始めたのはいつの頃だろうか
考え始めた時がわからないほど実行に移せてない
本当に自殺したいのだ、したいのだ、だが実行に移せない
首吊り用ロープも買った、薬もたくさん買った
自殺の方法ガイドとかいう悪趣味な本すら買っている、なのに行動に移せない
何故なのか、別にこの世に未練がある訳でもない
虐められていて復讐したいという訳でもないし虐待されてる訳でもない。
まず復讐したいならすればいいし虐待されてるなら児童相談所にでも逃げ込めばいいと思ってる。
だが友人関係も良好、虐待なんてされたことないし逆に過保護な程だ
本当に理由がわからない
考えても考えてもわからない
別に人の気を引きたい訳でもない、同情され興奮を感じるたちでもない
本当に何故なんだ、なぜ満たされないのか、いや、満たされない、と満たされたいという考え方からダメなのだろうか
ダメ、と自分の思考を改善しようとしてるのもおかしな話だ
私は何なんだろう
「やぁ、おはよう友紀」
なにもおかしくない、服だって綺麗に整えてる、でもあれ?今変なポーズになってるかな、涙目になってないかな、足が震えてないかな、と変なことばかり考えていたが相手は向かってきた玉を返すように言った
「あぁ、おはよう遅かったね、寝坊?」
あぁ、なにも変な所は無いんだ。
安堵の感情で表情で少しニヤついてしまった、だが1度安堵の感情が生まれるとなぜかさっきのようなネガティブ思考は生まれてこないのだ、自分でも不思議とは思っている
「うん、最近寒くて二度寝しちゃうんだ」
共感してくれ、じゃないと茶目っ気キャラで好かれようとしてるように見えるじゃないか
「え、わかる〜!最近いきなり寒くなったよね!6時とか地獄だよ、特にバスの中!」
よかった、やはり学生というものは脊髄で喋っているのだ。
深く考えていた自分が馬鹿に感じる
「バスなんだ..しかも6時とか...苦行じゃん」
よしよしこの調子だ、調子がでてきた..
キーンコーンカーンコーン
聞きなれたチャイムが鳴った、聞き慣れてはいるがここまで大音量じゃなくてもいいと思う
「やば、いつもより遅れてたの忘れてた!」
「はい、坂本ベル着」
担任の無慈悲な言葉がささる
うちのクラスはチャイムがなった瞬間に席についてないと遅刻になる。ベル後に到着でベル着、別に数秒の誤差で成績を下げられるのはおかしい、少し厳しすぎる、こんなに学校へ愚痴を飛ばしているが別の担任のクラスではベルが鳴り終わるまでに座っていれば遅刻にはならないと最近聞いた。
あぁ、運が悪いと考えるべきか自分が悪いと考えるべきか。
しょうがなく不貞腐れた顔をし黙って席に座る
何百と繰り返されたなんの変哲もない学生生活の始まりの音を担任がカゴを力強く置き鳴らした
背伸びをし、カバンを机の上に置く
急ぎ帰る人、予習をする人、友の机へ走り早くもふざける人、様々な人達がいる中私は帰宅を選択した
教科書などはロッカーへ入れているし、特に勉強したいとも思わない私はなぜカバンを上げたのか感じながら小走りで教室を出る
家へ帰ると何をしようか、読書、ゲーム、映画鑑賞にお菓子作り、私の想像する普通の人のやりたいことはこんなとこだろう、だが私は何もやる気が出ない、興味すらない。
だから自殺などというしょうもない事をしようとしてたのか
だが私は自殺のことを考えてしまう
今から車道に飛び出すと死ねるかな、左にある柵から身を乗り出すと死ねるかな、そんな事ばかり考えていた
なんの工事かはわからないが軽トラやはしごなどの工具が置いてある場所を見つめあの縄で..などと考えていたらある山が目に入った
小さい頃は心霊スポットと呼ばれていて近ずく事すらしなかった
少し呆けていてあまり来ない所へ来てしまったようだ
昔なら恐怖を覚え走り、来た道を戻るだろう
だが今の私は山の中へ進んだ、昔の自分なら考えられないだろう、入っていく人すら見たことない場所だから、でも今の私の目には素晴らしい場所に映った、そう、自殺にとっておきの場所じゃないか!と
飛び降りはできるし首吊りもできる、なのに人はこない、これほどの素晴らしい場所他には無い、おかしなことにここ数年感じてなかったわくわく、という感覚が私の頭から体を伝っていく
無意識中で小走りになっている自分に全くきずかず奥に進む
来るタイミングを間違えた、と思うほど山は暗く、寒く、孤独な恐怖を感じた
だが足は進むのをやめない、そうすると奥に灯りを見つけた、自分のようなバカの為についている、と考えたら何故か歓迎されてるように思えた
かなり歩いた、麻薬的なわくわくした気持ちも落ち着き、人なんて来ないのになんでライトなんてつけてるんだろう、どこからその電気代はでてるんだろう、という考えができるようになっていた
そしたらフッと記憶が戻ってきた
私は自殺できる場所を探しているのだ、と
普段はどう死ぬか。を永遠に考え続けているのに何故か山の中ではその考えが無意識にできない、恐怖だろうか、小さい頃に物凄く怯えていた事もあり精神にこの場所=怖いという考えが結びついてしまってるのだろう。
私は学校に持っていくものとは思えないような物しか入っていないバックからイヤホンを取り出し音楽を流す
これで怖さが紛れると思ったのだろう
結論紛れはするが大事なことを忘れてしまった
自殺場所を探すのだ、これで何回目だ
ここまで歩いているのに頂上につかない事が疑問から苛立ちに昇格しかけている
まずなんで私は頂上を目指しているのだろう?ここまできたら登ってやるという意地なのか
普通に意味がわからないな
そうした考えを巡らせ、寒さからか正常な判断が早くに出た
「降りよ..」
かなり歩いているのだ、もう少しで頂上かもしれないという気持ちが捨てられず名残惜しい気持ちからか独り言が出ていた
自分の口から出た言葉で思い出したように携帯を開き家族へメッセージを打った
うちの親はかなりの過保護でこんな歳なのに夜遅くなる時はメッセージか電話をしないと説教か嘆きの言葉でメッセージ履歴が埋め尽くされる事になる
手もかなり冷え、文字が上手く打てない
誤字をしては書き直すを繰り返していると
見覚えのある縄が輪っか状で後頭部から飛んでき、私の首を締め付ける
「え...」
いきなりの事だったのでびっくりしてスマホを落としてしまった
性能が悪いと文句を言いながら使っていた大事なスマホ、少し悲しくなった
首に絡みつく縄と首の間に指を差し込み延命を謀る
下山するにはかなり時間もかかる、もう私は詰みなのだ、だが詰みだからと言っても諦める訳にはいかない
付けてなければ先に気ずき、助かったかもしれないイヤホンが地面に落ちるのを気にせず首の縄を必死に広げる
「くっ..かっ..かは...はっ..」
道端でこんな呼吸音をしてる人を見たら笑ってしまうかもしれない
ここにきてやっと脳が回り始めた
だが脳が力の対価にくれたのは打開策ではなく後悔の言葉だった
「なんでこんな所に来てしまったんだ」「なんで私なんだ」「なんでこんな目にあわなきゃならないのか」「死にたくない」
そんな事を頭の中で永遠とループしている
やがて指も離れ私の体は地面へ崩れ落ちる
全ての力を使い振り向いた目にうつるのはなんとも気色の悪いしわを顔いっぱいに作った男の顔だった
次に目を覚ましたのは岩の上だった、奇跡的に助かったのか、という考えを体に巡らせたが指ひとつ動かない、あぁ、もう終わりなんだ
足掻くことすら出来ない、詰みなのだ。
腕や足は不思議と痛くない、暑く、脈を打ってるのがわかる程度だった
そして股間に嫌な違和感を感じた
よく見ると服もかなりはだけている
その瞬間あの男の気色悪い笑顔を思い出し、私はどうしようもない怒りを覚えた
こんなことの為に私をこんな目に?
こんなしょうもない欲望のためだけに?
虐められ諦めず復讐心を燃やす虐められっ子の気持ちがよくわかった
どうにかあいつを殺す
私の手で殺してやる
上半身を曲げる
今までに感じたことの無い電撃のような痛みが体を走った
だが私はそんな事には屈しない、痛むということはまだ私の体だという事だ
本気で助かろうとした、生きようとした、あいつを殺してやろうとした
このまま助かったとしても復讐などできるはずもないのに
だが神様は見ていてくれたのだろう、体が少し動き岩から降りられたのだ
その瞬間勢いよく丸太のように転げ落ちる
無造作に生えているきに腕や足が打ち付けられ酷い激痛が走る
だが下山できたら本気で助かると考えていたのだ
左足がちぎれた...右足もだ..
おもちゃよりも簡単にちぎれ壊れる色白な私の四肢達は私が落ちる場所を先に進み案内してくれる程度だった
そのまま勢いに身を任せ落ちていった
目が回りながらもどうにか進む場所を見ようと目を見開くと切られた木の根があった、
もう近くなんだ!
と希望を抱いたのもつかの間希望となった木の根にぶつかり私は激しく空中に舞った
なんと滑稽な姿だろうか
朝 5時30分友紀はあくびをしながら電気をつけた
そしてふと窓に目を向けた
そこには赤色絵の具でえがかれた女神様の拙劣な絵画が出来上がっていた
自他殺願望 @Hiragisan235
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます