ゆりかご

風と空

第1話 守り育むもの

 わたしはわたし。


 わたしは守るもの。


 でもね、育てているものもあるの。


 それは地面の下にあるのよ。


 そこは何億年という時間が流れる場所。


 わたしの懐でじっくりゆっくり育てるの。


 水はともだち。


 一緒になって育てるの。


 水がしみだし糸のように細い結晶をつくるのに三百年。


 それをゆっくりじっくり守り育てていくと……


 白く光る結晶の大輪の花が咲き誇るの。

 

 ひとは「地底の宝石箱」とよぶらしいわ。


 今もまだ毎日毎日、少しずつゆっくりと育んでいる最中なの。


 変わらないように見えても、少し、また少し伸びていくの。


 ときが育むものはいずれ形となってあらわれるの。


 すぐに期待しちゃ駄目。


 ゆっくりゆっくり。

 

 でも毎日毎日同じ事をくりかえすの。


 動きを止めちゃ駄目。


 みえないからってあきらめても駄目。


 年月があなたを育てるの。


 形になるまで大変よ。


 固まるまで時間がかかる事もあるわ。


 それでもわたしは守り育み続けるの。


 わたしという大地があなたをずっと支えていくために。

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