第19話 へいちん、帰る④

 ぷよぷよは、へいちんやナミちゃんといっしょに出来る、パズルゲームだ。落ちてくるぷよをどんどん消していく。単に消せばいいんじゃなくて、連鎖しないと勝てないんだ。最初はダンゼン、へいちんやナミちゃんが強かったけど、オレがコツをつかんでからは、なかなかいい勝負をしている。へいちんには「へいちんの方が強いよ」と言ったけれど、本当はオレが一番強いと思っている。コツはまず、どんどんぷよを落としていくことだ。

 今回のぷよぷよ勝負は、一回目はナミちゃんが勝って、二回目と三回目はオレが勝った。先に二勝した方が勝ちなんだけど、へいちんは一勝はしても、なかなか二勝出来なかったんだ。

「へいちん、もうつまんないからやめる!」

 へいちんはすねて、コントローラーを投げ出した。

 もう一勝負したかったけど、へいちんがソファで寝てしまったので、あきらめた。

 ナミちゃんと二人でやろう、とも提案したけど、ナミちゃんはごはん作るからダメだってさ。

 ちぇ。

 でも、今日は、学校でコマ回して楽しかったし、へいちんとキャッチボールも出来たから、いいか。

「すーくん、学校、どうだった?」

 ごはんを作りながら、ナミちゃんがへいちんと同じことを聞く。

「楽しかった?」

「うん、楽しかった!」

「よかった」

 ナミちゃんのパンダの顔がやわらぐ。

「あのね、今日、コマ、回したんだよ。それで、オレ、勝ったんだ!」

「へえ、よかったねえ」

「オレのコマが最後まで回っていたんだよ。それでね、明日もやろうねって、ジョーやひでと約束したんだよ」

「よかったね」

「うん! ……あ、そうだ。ナミちゃん、オレの木ゴマ見て!」

「どれどれ」

 オレは自分で色をつけた木ゴマを見せた。

「へえ、黒くて強そうだねえ」

「うん! ねえねえ、金ぴかシール、はってもいい?」

「コマにはるの?」

「うん! 回ると、きっとかっこいいと思うんだ」

「なるほど」

「ね、いいでしょ?」

「いいよ」

「よっしゃ! じゃ、はろうっと」

 シールを探しかけたオレに、ナミちゃんが言った。

「その前に、宿題をして、時間割合わせて。お便りも出して」

「……はあーーーーーーーい」

 ちぇ、つまんないの。でもナミちゃんには逆らえないや。

 オレはダッシュで宿題をして、時間割を合わせ、それからお便りも出した。ナミちゃんは「宿題、見せて」と言ったけど、「大丈夫大丈夫!」と言って、さっさとしまった。ナミちゃんに見せて、うっかりまちがいがあるとやり直さなくちゃいけなくなって、めんどくさいんだもん。それに今日は算数だし、きっと平気。オレは早くシールをはりたいんだ。


「ありがと、すーくん」

 お便りを受け取って、ナミちゃんが言った。

「あ!」

「何?」

「来週の月曜、授業参観だね、すーくん」

「えーーーーーーーーーーー‼」

 そういや、香月先生、そんなこと、言ってた!

 ヤバイヤバイヤバイ! マジヤバイよ、それ‼

「楽しみだねえ」

「……ナミちゃん、来るの?」

「行くよ~」

 何でもないことのように言って、ナミちゃんは笑った。……パンダだけど。

 ナミちゃん、パンダだけど、学校に来るつもりなんだ! 絶対マズイって!

 ……どうしよう……?




☆☆☆☆☆

「金色の鳩」

https://kakuyomu.jp/works/16817330651418101263

「銀色の鳩 ――金色の鳩②」

https://kakuyomu.jp/works/16817330651542989552

よかったら、こちらも見てくださいね。

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