第18話 へいちん、帰る③

 へいちんが塾に行くかっくんを駅まで送っていったあと、オレはへいちんとキャッチボールをした。

 へいちんはキャッチボールがうまい。オレがとりやすい球を投げてくれる。たまに、速い球や高く上がった玉を投げてくれたりもする。

「すーくん、キャッチボール、うまくなったなあ」

 そう言われて嬉しくて

「へへ」

 と笑って、思い切り、投げた! へいちんはすごく上手にキャッチする。

「すーくん、明日、土曜日だから、バッティングセンターに行こうか」

「行く行く!」

「お昼はマックにする? 自転車で、海沿いのマックまで行こう」

「行く行く!」

 オレはうきうきした。バッティングセンターも自転車でのマックも、へいちんがいないと行けない。ナミちゃんは(人間でも!)自転車に乗らないし(「乗れない」のじゃなく、「乗らないだけ!」とナミちゃんは主張しているけれど、「乗れない」んじゃないかなあって、こっそり思ってる。……言うと怒るから言わないけど)、バッティングセンターも「場所がよく分かんない」とかで連れて行ってくれないんだ。ナミちゃんは、車の運転は出来るけど、方向音痴だから、本当にバッティングセンターの場所が覚えられないらしい。

 へいちんがいると、やっぱり楽しい!

「すーくん、今日、学校どうだった?」

 速い球を投げながら、へいちんが言った。

 野球ごっこの話、へいちん、聞いているのかなあ。

 何しろ、ナミちゃんは何でもへんちんにしゃべっちゃうんだから。……ちょっと恥ずかしいような気がした。……まあいいか、どっちでも。

「今日ね、オレ、コマ、上手に回したんだよ! 強かったんだよ!」

 オレも速い球を投げ返しながら、言う。

「コマ?」

「うん! 学校で『昔遊び』をしてね、コマを回したの。木ゴマがもらえたんだよ。色ぬったから、あとで見てね!」

「いいね!」

「それでね、オレ、カンゴマも持って行ったの」

「カンゴマ?」

「うん、カンのコマ。金属のコマ。でね、カンゴマで勝負したら、勝ったんだよ!」

「すげーなあ」

「へいちん、コマ、回せる?」

「回せない」

「じゃ、今度教えてあげるね!」

「おお。……でもなあ、へいちん、へたくそだからなあ。すーくんには勝てないだろうなあ。ぷよぷよも最近勝てないし」

「じゃあ、あとでぷよぷよしよう! へいちんの方が強いよ、きっと!」

「じゃあ、ナミちゃんにも『いっしょにぷよぷよやりましょう』って言っといて」

「うん!」

「キャッチボールはもうおしまい! へいちん、疲れたから」

「分かった!」

 オレはグローブとボールをしまって、家に入った。

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