第20話 コマ勝負と授業参観と、「そのままでいいんだ!」①

「あたりだ!」

 オレは嬉しくて、大きな声で言った。

「何が?」

「あのね、あたりのタマゴだったの! ゆでタマゴ、つるぴかにむけたんだ。からがきれいにむけて、ゆでタマゴの身がわれたりしないのが、あたりのゆでタマゴなんだよ」

 ゆでタマゴはきれいにむくのがムズカシイ。

 すぐにわれたり、からがなかなかむけなくて、身がからについちゃったりする。

 だから、あたりのゆでタマゴで、つるぴかだと、すっごく嬉しいんだ

 今日はいいことがありそう。

「今日、授業参観行くね!」

 ナミちゃんが牛乳の入ったコップをオレの前に置きながら言う。

「俺、もう一個、ゆでタマゴ食べていい? すーくん、あたりのタマゴ、いいなあ」

 かっくんは真剣な顔でタマゴをこんこんってして、慎重にからをむき始めた。

 オレはナミちゃんの「授業参観行くね!」が気になって、タマゴを食べる手が止まってしまった。

「すーくん、黄身食べないの?」

「あ、うん。……かっくん、黄身食べてー。あげるー」

「ありがと、すーくん」

 オレは目玉焼きのときと同じように、黄身をかっくんにあげる。かっくんは嬉しそうに食べる。

「かっくん、タマゴ、食べすぎじゃない?」

 へいちんが言うと、かっくんは

「いいいんだよ!」

 と、また、口から黄身をこぼしながら応えた。

「わたし、高校生のころ、テスト勉強をしているとき、ゆでタマゴ作って、一度に六個くらい食べたりしていた!」

 ナミちゃんがノーテンキなことを言う。

「見てみて! 俺のタマゴもあたりだった‼」

 かっくんが満面の笑みで、つるぴかのタマゴをかかげる。

「いいねー、今日はいいことあるね! すーくんの授業参観も楽しみだね。ね、へいちん?」

「うん、楽しみだね」

「え!? へいちんも来るの?」

「そうだよー」

「今日、郡山に帰るんじゃないの?」

「今回は少し長いお休みにしたから、明日までいるよ」

「わーい! じゃあ、今日もぷよぷよしようね! あ、キャッチボールも!」

「いいよ」

「わーい! 約束だよっ!」

「うん」

 オレは嬉しくて、授業参観のこと――ナミちゃんがパンダの姿で授業参観に来ること、をちょっと忘れて、元気よく学校へと向かった。

 かっくんはまだのんびりとごはんを食べていた。かっくんはいつものんびりごはんを食べて、いつもナミちゃんに怒られている。

 オレは家にあるコマをたくさん回して、よく回る強いコマを見つけていた。ランドセルの中で、そのコマがカタカタと音を立てた。とても楽し気な音だった。




☆☆☆☆☆

「金色の鳩」

https://kakuyomu.jp/works/16817330651418101263

「銀色の鳩 ――金色の鳩②」

https://kakuyomu.jp/works/16817330651542989552

「イロハモミジ」

https://kakuyomu.jp/works/16817330651245970163

「つるし雛」

https://kakuyomu.jp/works/16817330651824532590

よかったら、こちらも見てくださいね。

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