第6話 殴り殺し
「へぇ・・・良い顔をしてるわね。もう、教室の中は死体しか居ないかしら?」
美咲は笑みを浮かべながら、相手の魔法少女を見下ろす。
その顔にはやや引き攣っていた。
「どうしたの?私が怖いのかしら?それとも緊張?」
美咲はゆっくりと降りてきて、窓の前に立つ。
「初めまして・・・私の名はフェアリー」
自己紹介をした美咲に対して、相手は怯えた感じだが、名乗る。
「私は・・・フランチェスカ」
「そう、フランチェスカ。もう満足したでしょ?この辺で降伏してくれない?」
「いやよ・・・まだ、足りないわ」
「だけど、あんたが憎んだ奴らは皆殺しにしたんでしょ?」
「まだよ。他の教室のヤツも先生も、塾の奴らだって・・・私をバカにした奴らは全員、殺す。殺す。殺す」
彼女は顔は怒りに醜く歪む。
「まぁ・・・しっかり殺意だけに染まってるわね」
美咲は諦めたように魔法のステッキを振り上げる。
「じゃあ、死になさい」
「うるさいぃいいいいい!」
美咲とフランチェスカのステッキが同時に光り出す。
刹那、互いの間で爆発が起きた。
美咲は爆風に吹き飛ばされ、空中で一回転して、踏み止まる。
「やるじゃない。私の魔法の発動に応えるなんて」
美咲は笑みを浮かべながら、更にステッキを振るう。
彼女の前に出現した魔法陣は爆炎から飛び出した光の帯を弾く。
「良いわよ。闇雲に魔法を飛ばすスタイル。嫌いじゃないわ」
美咲はお返しにと言わんばかりに魔法のステッキから多量の光の帯を爆炎に放った。
再び、爆発が起きる。校舎の壁が破壊され、瓦礫が崩れ落ちてゆく。
それを画面越しに見ていた県警本部長は唖然とする。
「おいおい。仮に教室内が遺体しか無くても、そんなに派手に破壊したら、損壊した遺体を集めるだけで大事だぞ?」
それを聞いていた周囲の幹部達も沈痛な面持ちであった。
そんな事を無視して、美咲は次々と魔法を撃ち込む。
煙が晴れる事なく、爆発が続いた。
美咲が10発目を撃った後、休憩をする。
魔法を発動すると体力も消耗する。美咲は肩で息をする程に疲れた様子を見せた。
煙は晴れていき、教室が無くなる程にポッカリと大きな穴が開いた校舎が姿を見せた。そこにフランチェスカの姿は無い。
「ふむ・・・逃げた?」
美咲は周囲を見渡す。
刹那、真下から美咲に飛び掛かる影。
フランチェスカの魔法のステッキが美咲をぶん殴る。
激しい一撃を顎に食らった美咲は軽々と吹っ飛び、落ちていきそうになる。
だが、何とか意識を保ち、彼女は空中で止まった。
口の中を切ったみたいで、口元から血が流れる。
「ちっ・・・殴るって・・・ステッキを物理的に使ったヤツを初めて見たわ」
美咲の苦痛に歪んだ顔を見て、フランチェスカは笑った。
「あんだけ、バカスカ、撃ち込んでくれたおかげで良い隠れ蓑になったわ」
フランチェスカは魔法のステッキを振り回す。それは素早く、鋭い。
美咲はかろうじて、ステッキで防ぐが、防戦一方であった。
「魔法少女でしょ?魔法を使いなさいよっ!」
美咲は魔法を発動させようとするも、鋭いステッキの一撃で不発に終わらされる。
「殴り殺してあげるわ。見てなさい!」
フランチェスカのステッキが輝き出す。それを彼女は振るった。
美咲はそれをステッキで防いだが、今まで以上に強烈な一撃に軽々と吹き飛ばされる。
「ははは。ステッキを強化すれば、この程度の事も出来るのよ。何も遠距離攻撃だけが魔法じゃないってね。そして、遠距離魔法はこう使うのっ」
フランチェスカはステッキを大きく前に突き出す。刹那、魔法陣が浮かび上がり、ステッキから力の光が流れる。一時の間を置いて、魔法陣から拡散されて発射された黄色の光の筋。それは強烈に吹き飛ばされ、何とか態勢を戻そうとしている美咲に降り注ぐ。
「逃げられない」
美咲はその無数に降り注ぐ光の筋に退避を諦める。
光の筋は熱量と質量を持って、美咲に降り注ぐ。
外れた光の筋が地上に落ちて、建物を破壊した。
美咲は閃光の中に消えた。
フランチェスカは手応えを感じたのか、光の筋を発射するのは止めた。
「他愛もない。魔法少女の癖に人間に味方するなんて・・・愚かなのよ」
黄色い閃光が消えた時、そこに人影があった。
美咲だ。彼女は魔法陣を展開して、フランチェスカの攻撃を紙一重で防ぎ切った。
だが、その体はボロボロで、一目で大きな負傷をしているのが解る。
「はぁ・・・はぁ・・何が人間に味方するよ。冗談じゃない。私がこちら側に居るのは私の中の正義の為だけ。あんたらが何が目的で人類虐殺を考えているか解らないけど、そんな勝手・・・許せるわけがないじゃない」
「生きてたか・・・あんた、魔王様の言葉を覚えてないの?」
「なにそれ?」
「私たちが力を欲した時・・・魔法少女の契約をする時に聞いた魔王様の言葉」
「覚えてないわね」
「だからか・・・人類虐殺って言ってるから、何を言っているかと思ったけど」
「何かを知っているようね」
「知ってるも何も・・・魔法少女なら当然の使命の話よ」
「使命?」
美咲は訝し気にフランチェスカに尋ねる。
「ははははははは。馬鹿な子ね。死んでいくあんたに教えても無駄よ。さぁ・・・殺してあげる。その体を粉々にしてあげるから」
フランチェスカはステッキを振り上げ、ステッキに力を溜め始める。
それが必殺の一撃である事は美咲も気付く。だが、ボロボロの体ではまともに動く事もままならない。
防ぐか・・・攻めるか・・・。
美咲はフランチェスカを睨みながら、懸命に次の行動を選択した。
魔法少女を狩る 三八式物書機 @Mpochi
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