第25話 改稿済み
「いやぁ、これは、そのなんていうか。追放されてな。路頭に迷ってる」
「夜の間に何があったの!?」
露骨に目を泳がせながら彩人はありもしないことを口にする。
ツッコミを入れながらも、内心で莉里は何が起きているのか察した。
理由は、蹲る海の側にはカメラが落ちており、身体の向きとその先にあったもの、前の世界での記憶。
それらが全て合わさった結果、莉里は海が自分のことを盗撮しようとしていたのだと、正確に事態を把握した。
この赤城海という男は莉里と元カレが出会うきっかけを作ったストーカー男だ。
しかも、莉里の色んな顔を撮影するために監禁までししようとしたかなりヤバい奴で、入学してから間もなく盗撮を始めており、色んな写真を沢山撮っていたのを覚えている。
だから、いつかこうなる事は分かっていた。
自分達のクラスを確認したあの時からり証拠が揃い次第すぐに処理するつもりで莉里はいた。
しかし、予定外やことに彩人が海と友人関係になってしまったせいで、表立ってやるのは色々と難しくなったが。
それでも、やるつもりだった。
彩人には海が犯罪を犯すような奴だったとバレないように。
彼が傷つかないよう秘密裏に。
特に、この林間学校はチャンスだと思っていた。
写真部の海は、一年生の様子を写真で撮るという仕事があったから。
犯罪者がそんな免罪符を手に入れたら、きっと自分のことを盗撮しようとするはずだ。
二日目の夜くらいに、適当に理由をつけてカメラを奪えば証拠を抑えれると計画していたのだが。
これは完全に予想外だ。
まさか、ことを済ませる前に彩人が気が付いていしまうなんて。
表では何も知らないフリをしているが、内心どうしたものかとかなり頭を悩ませていた。
「男にも色々あるんだよ」
しかし、莉里がタイムリープをしているなんて知らない彩人は必死に誤魔化そとしているのだが。
あまりにお粗末過ぎて笑えてくる。
(そんな犯罪者庇う必要なんてないのに)
実はまだ海が犯罪を犯す前に踏み止まった知らぬ莉里は、致命的な勘違いをした。
排除すべき存在だと。
前の世界に未だ囚われている莉里は思い違いをする。
海が捕まる以外の道はないんだと無意識に決めつけてしまっていた。
だから、この世界で唯一信頼していた幼馴染が犯罪者を庇っているのだと認識してしまい、濁った。
世界の全てが濁っていく。
この幼馴染も元《クソ野朗》カレと同じなのだと。
昔は自分だけを見て、助けてくれたのに。
時間が経てばそれは変わって結局裏切るのだと。
濁る濁る濁る濁る濁る濁る濁る濁る。
「……」
「莉里?」
幼馴染の瞳から生気が失われていくのを感じ取った彩人は、怪訝そうに顔を覗き込む。
この顔に彩人は見覚えがあった。
初めて出会った日と同じだ。
世界の全てに絶望したような顔。
誰も信じられなくなっている顔。
(これ、もしかして莉里は赤城が何しようとしてたか分かってた?でも、それなら、盗撮される前に食い止めた俺をこんな顔でみるか?莉里の性格的にありえねぇ。てことは、見えていたわけじゃない)
それを見た瞬間、彩人は莉里が何か変な勘違いをしていることに気がつき、彩人は思考を巡らせる。
どうすればこの勘違いが解けるのかを。
(赤城が、莉里ばっかりにカメラを向けていたことに気が付いていた?視線に敏感だかんな、あり得なくはない。つまり、莉里は海が盗撮をしていると思っていて。それを誤魔化している俺も同罪だと思っている?うわぁ〜、クソ面倒くせぇ。赤城のことをよく見れば、今コイツが反省中だって分かんのに。どう説明すればいいんだ!?)
何となく状況は掴めた。
本当に面倒臭い。
特に、仕事の範囲内とはいえ莉里ばっかり撮っていたこともあって、盗撮をしてないと強く否定出来ないのがだるい。
蹲り、俯いて下を向いている二人とは対照に彩人は上を向き空を仰いだ。
そして、どうすれば莉里の勘違いを解けるのかを考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えた結果。
ショートし暴走した。
「あぁぁぁぁ〜!お前らマジでめんどくせぇ〜〜!」
「「!!?」」
突然大声を出した彩人に呆然とする二人。
先ずはその中のしている片割れ。
赤城の胸ぐらを掴むと、彩人は感情のままに言葉をぶつけた。
「お前が、莉里にカメラチラチラ向けるせいで本当面倒なんだが!?俺、良いことしたよな!?友達が犯罪を犯すのを頑張って食い止めたよね!?めっちゃ漫画みたいにかっこいいことしたよな!?それなのに何で勘違いされてんだよ!いやぁ、まぁ、その後俺が誤魔化そうとしたのが悪いけどさ。えっ、莉里にあんな顔されるとかあり得なくね!?普通は笑顔で感謝されるよな!?なのに、お前が盗撮まがいのことをしまくったせいで、なんか俺も盗撮したと思われてんだが!?ふざけんなよ、まじで!?あぁ!?そんなことしてねぇっての!?俺は人様にちゃんと許可取ってから写真撮ってます〜!?『撮っていいですか〜?』って毎回毎回部活見学の時確認しとったわ!盗撮なんてするわけねぇだろ、ばーか!てか、盗撮犯いたら普通にぶん殴って拘束して警察呼んでるわ!」
ここまで息継ぎなしで言い切ると、今度は莉里の方を向き同じように胸ぐらを掴み引っ張る。
「それをしようとしてない時点で察せよ!何年付き合いがあると思ってんだ!俺が犯罪を犯すようなヤバい奴じゃないことくらい分かるだろ!過去に、手が出ることは何回かあったけど!ちゃんと正当な理由があってやってたじゃん!?やり方はあれだけど、常識の範囲内だったじゃん!?てか、俺が優しい顔で泣いている赤城慰めてたんだから、状況証拠的に良い感じに解決したことくらい分かるだるろぅぅぅが!?変な勘違いしやがってふざけんなよ!俺がお前のことを害するような奴許すわけねぇだろ!タコ!ていうか、今朝次困ってたら助けるって約束してただろ!そんなクズな悪役みたいに、約束破って裏切るわけねぇだろ!そう言うのをする時は、マリ◯とか桃◯とかやってる時だけだ!あれはそういうゲームだからなぁ!あぁ、もうよく分かんなくなってきた!
とにかく、俺が友達や、幼馴染を見捨てるようなことするわねぇだろうが!?間違ってたら間違ってるって言うに決まってんだろうが!?
俺は何もしないような薄情者じゃねぇ!!!分かったか、馬鹿共!…ぜぇー、ハァー、ゼェー、ハァー」
「……えっと、そのなんかごめんね?」
「……御免なさい」
全てを吐き出し、肩で大きく息をする彩人に二人は謝罪の言葉を返した。
本当にごめんなさい、と。
この時、二人の目には狂気も濁りといった悪いものは消えていたのだった。
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