第8話 認知症、治っちゃいました。いや、マジで。
それではさっそく、作り方といきましょう。
必殺! 脳活パン。
材料
小麦粉 一〇〇グラム
オートミール 三〇グラム
ひよこ豆粉 二〇グラム
小豆粉 二〇グラム
素焼きクルミ 一五グラム
素焼きピーナッツ 一五グラム
米油 二〇グラム
塩 二グラム
水 テキトー
作り方
1 素焼きピーナッツは薄皮をむいて割っておく。
2 素焼きクルミは指で砕きながらボウルに入れる。
3 2のボウルに素焼きピーナッツ、ひよこ豆粉、小豆粉、オートミール、小麦粉、塩を入れてシャカシャカ混ぜる。
4 米油を入れてシャカシャカ混ぜる。
5 水を入れてシャカシャカ混ぜる(水はドロドロのスープ状になるまでたっぷりと)。
6 クッキングシートを敷いたケーキ型に生地を流し込み、二〇〇度のオーブンで五分焼く。
7 五分たったらそのまま一八〇度にして二五分焼く。
8 型から取りだし、クッキングシートごとひっくり返して一八〇度で一〇分焼く。
以上、材料をどんどん加えてシャカシャカ混ぜて焼く。
たったそれだけの簡単な作りです。
発酵パンのようにふくらませるつもりは最初からないので発酵なんていう手間はいりません。ベーキングパウダーなんてよけいな物も使いません。砂糖ももちろん、ナシです。完全な食事ですから。
小麦粉だけではなくオートミールに豆の粉、ナッツ類も入っているので栄養豊富、バランスも抜群。普通のパンでは得られないタンパク質やミネラルもしっかり摂れます。小麦粉を、生成された白いものから全粒粉に切り替えればさらにヘルシーになることでしょう。少々、割高にはなりますが。
毎食、同じ味では飽きるので、ココアやカレーパウダーを加えて味に変化を付けています。米油をオリーブ油に、水を冷ましたローズマリーティーにそれぞれかえて、フォカッチャ風にしてもおいしいです。ただし、ココアを入れると苦くなるので注意(ココア……というかカカオって苦いんです。チョコレートの甘さは実は砂糖によるもの。ビターではない、一般的な甘いチョコレートは実はカカオより砂糖のほうが分量、多いです)。
バリエーションを含めても簡単な作りなので、クッキーを作ったことのある人なら簡単に作れます。
ただひとつ、注意していただきたいのはオーブンで焼く段階。
一口にオーブンと言っても機種によってずいぶんと性能にばらつきがあるそうです。うちのオーブンの場合、熱源が真上にあるせいか下までなかなか火が通りにくいんですよね。長い時間、焼いていると上は焦げているのに下は生のまま……なんてことがよくあります。ですので、それを防ぐために途中でひっくり返しているわけです。
もし、お宅でお使いのオーブンが『上は焦げて下は生』なんていう心配のない、全体が均一に焼ける機種ならひっくり返す必要はありません。
その場合、焼き時間もかなり違ってくるでしょう。その点はご自宅のオーブンの癖をつかみつつ、適切な焼き方を見つけてください。
さて。なぜ、これが『必殺! 脳活パン』なのかと言いますと、実はこれ、認知症を発症した母のために作ったものなんです。
去年の夏、いえ、もう少し前ですかね。その頃から急に幻覚を見るようになりまして。さらに、来ているはずのない人が来たと言い出したり、自分は本当の母親ではないと言ったり、私のことを別人だと思い込んだり……。そう言う症状が普通に出てきたんですね。
何しろ、私のことを別人だと思っているので、私がいないと思い込んでいる。『森也どこ行った、森也どこ行った』と騒ぎ立て、夜中にひとりで探しに出かけようとまでする始末。さすがに困りました。
とは言え、『妄想を否定するともっとひどくなるから否定しないように』と、言われていたので否定も出来ない。
『さて、どうしたものか』と思った結果、仕方がないから『親父の世話をするために施設に移った』ということにしました。当時、父はすでに寝たきりで施設に入っていましたから。
この説明、完全に信じてましたね。
ちなみに、医者からはアルツハイマー病とレビー小体型のミックスと言われました(一口に認知症と言っても何種類かあるんです)。
まあ、そんな具合でしたので『脳に効く』という噂の食品をすべてぶち込んで脳活パンを作ってみたわけです。
いえ、別に期待していたわけじゃないんですよ。そんなことで認知症が治るなら誰も苦労しないし、改善できるレベルはとうに越えていると思っていましたから。でもまあ、やって損はないし、とにかくやってみようと。
そして、週五日(毎日、同じものだとさすがに飽きるので、週二日はちがうものを食べることにして)昼食に食べてもらっていたわけです。そして、半年……。
認知症、治っちゃいました(笑)。
いや、ほんとに。
今年のはじめあたりから気が付いたら妄想めいたことを言わなくなっていて、いまではもう、幻覚も妄想もまったくなし。私のことを別人だと思うこともなくなりました。いまでは『あの症状はなんだったんだ?』状態です。
もちろん、高齢による衰えそのものは徐々に進行しているわけですが、はっきりと『認知症』と言える症状は出ていません。前述の通り、改善が見込める段階はすでに過ぎていると思っていたのでこちらが驚いています。
まあ、ちゃんと病院にかかって薬も出してもらっているわけですから、脳活パンだけで治ったわけでもないでしょう。それでも、病院の薬で認知症が治るなら問題になっているわけがない。となるとやはり、脳活パンの影響は大きいのだと思います。やはり、栄養状態は大切というわけですね(くれぐれも言っておきますが『うちの母には効いた』と言うだけです。他に人に効くという保証はありませんし、できません)。
ところで、脳活パンを作る時間帯ですが、毎日の食事ごとに作る、なんてやっていられませんので週に二日、運動を休む日の夜に作っています。木曜の夜に二日分、日曜の夜の三日分をまとめて作り、切り分けて冷凍保存。昼食時にオーブンで焼いて食べています。ちなみに、上記のレシピは二日分の場合です。私と母、ふたりで食べて二日分なので四食分と言うことですね。このとき、同時に特製の菓子も焼いています。
えっ?
それも面倒じゃないかって?
もちろん、面倒です。何と言っても休めないし、かわりに作ってくれる人もいないわけですから。それでも、
――認知症の親を世話するよりずっと楽。
と言うことで、毎週せっせと作っています。
それに、私だって脳の栄養はちゃんと摂った方がいいに決まっているわけですしね。認知症を発症後、すっかり別人になった父の姿を間近で見てきただけにけっこう切実です。
さて、少々、気の重い話になってしまいましたね。しかし、養生の目的が『最後まで健康に人生を生ききる』ことにある以上、避けては通れない問題です。
とは言え、こんな話ばかりでは世の中に華はない。と言うわけで気分をかえて、次回はみんな大好き、お菓子の話と参りましょう。
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