異世界コンサル~専門外から恐縮ですが~

@hatatata08

始まり方から恐縮ですが

 ワタツミ王国召喚の間。


 間は緊張に包まれていた。

 100年に1度の召喚の儀。大気中に存在するマナが溢れるて暴発する事を防ぐ為に、異世界からの勇者を呼び出すとして代々行われてきた申請な儀式だ(一方的な拉致ともいう)。


 時に世界を滅ぼさんとした魔王を討伐、時に国に巣食った悪党集団を壊滅、時に万病を治すとして世界中を巡る、

 記録に残るだけでも、勇者、傾国の救世主、聖女等と呼ばれる英雄がこの召喚の儀にて、異世界よりこの世界に生み出されてきた。


 そしてワタツミ暦500年、来るべき儀が今執り行われようとしていた―――!


「・・・緊張しますね」


その間の中にパっと目を引く女性が1人。ブロンドの長髪は美しく流れ、高貴な身分である事を容易に想像させる。顔の造形も美しく、パーツ一つ一つを精密な材料で作ったの如く、高雅な美を表現していた。

つまりめちゃくちゃ美人のこの人が、ワタツミ国第一王女、エリオット=ヤマトその人である。



「ですな。とはいえ今は太平の世。あくまでも儀礼的なものにはなるかと思われます」


 そんな彼女に寄り添うのは、白髪板垣退助髭、メタルフレームの丸メガネに燕尾服のセバスチャン。

 爺や然とした彼はもちろんエリオットからは爺やと呼ばれている。


 どのような人物が召喚されるか分からないこの召喚の儀において、有事の際に対応出来る量城内にいる兵士が十数人詰めているこの部屋に、武力的には戦力にならない2人がいるのには理由があった。


「王国特務部 召喚人物対策室・・・父がこのようなものをわざわざ立てる意味は測りかねます・・・」


「王国初の王女の誕生に向け、少しでも箔をつけさせたいという計らいかとは存じますが」


 王国特務部 召喚人物対策室、3ヶ月ほど前に召喚の儀に向けて設立されたものの、所属しているのはこの2人だけだった。


「それは分かるのだけどね、この平和な世の中に勇者なんて求められていないと思うのですよ。

 いくら素晴らしい実力を持つ人物が召喚されたとして、使いどころのない力など持て余すだけです。本当に箔付けの為の部署を作っておく余裕等この国には存在しないと思いますが」


「まあおっしゃるところは分かりますが―――」


 と自分が置かれている状況があまりにもお飾り過ぎないかと、エリオットが功名心を持つ若者特有の不満を出していたところで、部屋の中心にあった魔法陣が眩い光を放ち始めた。


「こういうのって、何の脈略もなく始まるものなの!?」


 いわばマナのガス抜きとして設計された異世界召喚の魔法陣は、時の満ちと同時に自動的に召喚を開始した。


 果たして召喚されるは一騎当千の武芸者か、優れた医療技術を持つ救世主か、はたまた。


「―――あの、専門外から恐縮ですが、あれ?」


 そして光が引いた後、魔法陣の真ん中には30手前に見える一人の男性が、なぜか挙手をした体勢で佇んでいた。

 グレーパンツに、紺ののジャケット、茶のベルトと革靴に、メタルフレームのメガネで固めた痩身の男。


 今回召喚の儀にて繋がったのは、日本。

 呼び出したのは、目黒ダイキ29歳。特に格闘技を習っていたなどではなく運動神経も人並みな、大学では経営学を専攻し、特に医療等の専門知識もなく、しいて特徴を挙げるとすれば最近大量採用含め日本での職種としての知名度を上げてきている、職業、経営コンサルタントの人間だった。


「うーん、特に強そうには見えないわね」


「召喚はその時において大きく必要とされる人物が選ばれると言います。何か我が国の状況をマッチする秀でたものを持っているのでしょう」


「すみません、そこのお二方。私全く状況を把握出来ておりませんが、もしご存じでしたら説明をお願い出来ますでしょうか」


 エリオットとセバスチャンが二人で喋っているところに、事情を何か知っていると察したダイキがコミュニケーションを図る。


「えーっと、そうしましたら、部屋を変えましょうか」


 武力を有した兵士たちが明らかに無害そうなダイキに向ける視線はそれでも警戒の解けないものであったので、それがエリオットには居心地が悪く、場所を変える事にした。

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