熱血寿司バトラーショウ!! 強敵まみれの神SUSHI大会決勝編

不許

熱血寿司バトラーショウ!! 強敵まみれの神SUSHI大会決勝編

職人が握った寿司には神が宿るとされる――

寿司バトル!! それは寿司同士のぶつかり合い!シャリとネタ、そして両者の誇りを賭けた真剣勝負!

その名誉ある決戦の場――神SUSHIグランプリに俺、ショウも参戦することになった!


「行けっ僕のノルディックサーモン!」

「オラはマグロだァッ……うおおぉっ!?」


サーモンが軽やかに空を舞い、カリフォルニアロールが火を吹く。

神SUSHIグランプリでは普通の寿司など通用しない!


「エドマエコンビの圧勝圧勝圧勝です!!やはり強いぞ、エドマエ!!」

「ふっ、お前たちでは相手にならんな。私たちが世界を取る。行くぞ相棒!」

「おうよ兄弟!」


始まったグランプリバトル。

ショウはライバルたちを前に熱く血が滾るのを感じていた。


「すげえっ、あいつらコンビネーション技だ!!」

「ショウ、なんだか強い人ばっかりみたいだけど大丈夫なの……?」

「俺はぜってー負けないさ。なんだって神職人になる男だからな!」


(魂を込めたこの握り飯で……俺は世界の頂点に立つ男になる!)


数々の激闘を乗り越えて、ショウはついに決勝戦の舞台へ――!

だが、そこには思わぬ伏兵が待ち受けていた……!



決勝のスタジアムに現れたのはフードで顔を隠した謎の人物。

怪しい佇まいながら威風堂々としており、一挙一動にまるで隙がない。

滲み出るオーラはまさに王者そのもの。


「まさか貴様らがここまで勝ち上がるとはな。しかし、我が真の実力を発揮すれば恐れることなど何一つ無いのだ!」

「お前、まさかあの時の……!」

「そうだ! 私はかつてこの大会に現れ、この大会をすべて破壊した者……その名も"食品衛生課"だ!」

「なんですって!?」

「聞けばこの大会、寿司のネタが急に飛んだり燃え上がったり、壁に穴を開けたりするそうじゃないか。

クックック、ならんならん! 食品の管理がなってないなあ……? ここは私が徹底的に管理してやろうではないか!!」


男が外套を脱ぎ捨てるや否や現れたのは、純白の作業服。

洗い立ての制服は何者も寄せ付けない神々しさすら纏っていた。


「なんということでしょう! 決勝に現れた男は政府の犬! このままでは食品衛生課の通報で大会が中止になってしまいます!」

「そうはさせるかよ!」

「ショウ……?」

「ここで会ったが百年目! 今日こそ年貢の納め時だぜ、食品衛生課さんよォ!!」

「フハハハッ! 面白い冗談だ。私の恐ろしさを知らないようだな……。

いいだろう、教えてやる。この私こそが市民の声なのだ!!」


――傷んだ魚食って一家もろともお腹壊しちゃったわ……。

――おいコラァ!!うちのお子様に変なもの食べさせんじゃねェぞ!


苦情、クレーム、脅迫、エトセトラ……!  お客様のあらゆる悪行の限りを知り尽くしてきた男・食品衛生課。

日本中の怒りを、食品に当たった悲しみを一か所に集め、莫大なエネルギーが形作られる。その奔流が食品衛生課の両腕に吸い込まれ、保健所の力を宿した!


「なんて野郎だ……!」

「さあ来い、小僧ども! まずはこの寿司ネタから破棄してくれるわ!」


襲いくる爆発と閃光、吹き荒れる爆風、飛び散る火花、そして爆音。

男が指を鳴らすと無情にも次々と寿司たちが爆散していき、ショウの愛機エレキサンダーアナゴもまた激しい炎を上げる。

だがショウは怯まない。

エレキサンダーアナゴが炎上していい匂いがしようとも決して目を逸らさず、目の前の男を強く見据えた。


「ショウ、どうするの!?」

「仕方ねぇ。こうなったら最後の手段を使うぞ……!」

「ハーッハッハッハ! 無意味無意味! 今更どんな手を使おうが――」

「最終奥義"回転寿司屋さんの出前便"を発動する!!」

「な、なにぃ!?」


ショウの背後に立ち上る寿司のオーラ。

回転する寿司たちが次々に射出され、空の星々に激突していく。

『うおおおっ!! 俺の寿司が、俺たちの魂がッ……回るぜええええーっ!!!』

そして、無数の回転寿司が一点に集結すると眩く輝き、それは巨大な光の柱となって天を貫いた!


「見ていろ、これが俺の究極必殺技――"出前寿司・天丼セット"だぁぁあああッ!!」



突如、客席の一角に巨大なトラックが現れた。

荷台には寿司ネタが大量に積まれている。



「これは一体どういうことでしょうか! なんと、選手の席の隣にいきなりトラックが現れました!!」

「あれは出前の発注ができるサービスなんだ。選手席の受付カウンターで、新鮮なネタを選手に届けたり、逆に握った寿司をスタジアム外へ送ったりできるだろ?」

「なるほど。確かにできますね」

「実はあのシステムは――俺が作ったんだよ!」

「な、なんですってーッ!!」


この寿司バトルじゃ、ネタを注文するとすぐに届けてくれる便利なサービスがあったんだけど、赤字続きだったらしくてさ。

それならいっその事もう寿司の配送や、ついでに出前までやって利益を上げちまえばいいんじゃないかって思って。

それで俺は寿司職人としての修行の傍ら、毎日のように魚屋の兄ちゃんと試行錯誤を繰り返してた。


「そしてついに完成したのが、この"出前便サービス"だ!!」

「そんなことが……!」

「もちろん最初はうまくいかなくて、何度も失敗を繰り返した。でも、諦めずに続けていくことで必ず結果は出る!

……それが職人ってもんだろ?」

「ショウ……あなたって人は……本当にすごいわ!」


会場中が拍手喝采に包まれる。

観客たちはみな美味しい宅配寿司を待ち望んでいたのだ。

彼らの熱い想いが今ここに結実した瞬間であった。

ショウが声をかけると同時に、大量の出前寿司が次々と客席に運ばれていく。

そのどれもが新鮮な生魚を使った一級品。

そしてその味は……まさに絶品!


「これで終わりだぜ、食品衛生課!! 喰らえ、必殺の出来立てホヤホヤ「出前寿司・天丼セット」ッーー!!!」


――シャリとネタの食感が見事にマッチし、口の中でハーモニーを奏でる。

――タレの風味が食欲をそそり、思わずご飯が止まらない!

――そこにかかっているのは甘辛い醤油。寿司の風味を邪魔しないシンクロニティ!


「ば、馬鹿な……これほどの美味と速度でありながら食品衛生法を守ってる…守ってるゥーーー!!!」


行き場を無くし暴走する保健所の力に、食品衛生管理課は耐えきれず……爆散した。

長きにわたる闘いについに決着がついたのである。


「食品衛生管理課は倒れた!! 勝者は―――ショウ選手です!!」

「やった! ショウ、勝ったんだよ!!」

「まぁざっとこんなもんさ!」

「うおおおおおおおおおおおっ!!!!」


大歓声が巻き起こり、表彰台へと続くレッドカーペットが敷かれる。

そこには勝利者を称える花束があった。

おめでとう、少年よ。君こそが真のチャンピオンだ!

そう言わんばかりに燦然と輝く優勝トロフィー。


(へへっ、前アイツと戦ったときは消費期限切れのマグロを爆破されたけど……俺も強くなったもんだな)


ショウは高々と掲げようとトロフィーを手にしようとした……が、隣にいた誰かのほうにトロフィーが渡された。


「あれ?」


トロフィーを手にしたのは至って普通の寿司職人。

彼はショウの健闘を称えながら、爽やかな笑顔を見せた。

――少年。君はよく頑張った。サービス創設者として尊敬しているよ。

そう、彼こそ食品衛生法を最後まで護り抜いていた誇り高き戦士。


その名も――魚屋のおじさん改め、出前寿司屋さん。


「おめでとうございます! 優勝したのは出前寿司屋さんです!!」

「な、なんでだよォオオオオッ!?」


――こうして、「出前寿司・天丼セット」はその名を広く知らしめることとなった。

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