赤
モンタロー
2
輪郭がぼやけそうなくらい透き通った白い肌と、さっき食べていたりんご飴でより
長い睫毛はぴんと上向き、少し茶色がかった瞳は
空に咲いては散る儚い花畑を見つめている。
夜風が君の顔を沿うように垂れた髪を揺らす。
僕は恐らくこの場にいる人間の中でただひとり、みんなと違う方を見ていた。
空に乱れ咲いた光の花々よりも、隣に座る一輪の花の方が僕にとってはよっぽど魅力的だったから。
僕の視線に気がついたのか、彼女はきょとんとした顔でこちらを向く。
そんな君が堪らなく愛おしくて。一秒だけ。ふたりの呼吸を止めた。
りんご飴の味だけではないような気がした。
彼女の頬が紅潮して見えたのはきっと、赤い花火のせいではないだろう。
顔を見られたくなかったから。僕は何事もなかったかのように前を向いて、終盤に差し掛かって光に埋め尽くされた空を眺める。
視線は移さずに、薄く砂の積もった石段に指を這わせて、浴衣の袖から覗く君の手に絡める。
少し
もう夏は終わるのに、まだ春は終わらない。
赤 モンタロー @montarou7
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます