ガムシロップは入れてない

モンタロー

3

「結局雲退かないまま太陽上がっちゃったー」

溜息が重なる。

新年のスタートは微妙だった。

来る途中コンビニで買った温かいココアは握り締めて暖をとっていたので、既に冷めていた。

猫舌な私には好都合だった。

加奈子がみんなで初日の出を見に行こうと言い出したのは、つい四時間前だ。

小中の同級生なので家はご近所同士。

いつメンのグループチャットであけおめスタンプを送りあった後、紅白に出ていたアイドルの話で盛り上がっていた時に私が会って話したいねと何気なく送ったことでふと思い立ったらしい。

近所の高台にある公園は穴場だったようで、私たち以外に人は老夫婦が二組しかいなかった。

「そこの神社で初詣してから駅前の喫茶店にモーニング食べに行こうか」

由美の提案で向かった神社は少し混んでいた。

十分ほど並びながら談笑した後、無事参詣を済ませた。

「何お願いしたのー?」

「言うわけないでしょ!」

彼が振り向いてくれますように、なんて言ったら叶わなくなってしまうし、どうせばかにされるもん。

起きてから食べ物を口にしていなかったので急いで喫茶店へ向かおうとしたが、御籤の前で三人とも足を止めた。

「「「恋御籤っ……!」」」

みんな迷わず小銭を出した。

「せーので開くよ。せーのっ。あー小吉……」

「真紀大吉じゃん!」

「やったあ」

「抜け駆けは許さないぞ〜」

二人が枝に括りつけている間に写真を撮って、親しい友達のストーリーにあげた。

親しい友達リストには彼しか入っていない。

「何ニヤニヤしてんだ真紀。大吉だからっていいご身分ですねー。由美ぃーこんなやつ置いて行こっ」

先を歩く二人を追って、横断歩道の白いところだけを踏んで小走りで喫茶店を目指した。

注文を済ませて待っている間にスマホが震えた。

彼からのコメントだった。

「誰だ、その幸せもんは」

「内緒。」

「えー加藤のケチ」

お前だよこの鈍感野郎。なんて口が裂けても言えない。

「そっちこそいないの?好きな娘」

「え、好きバレしてると思ってた」

思わず珈琲を吹き出した。

向かいに座っていた加奈子には間一髪かからなかった。

「え、私たちの初笑いこれ?」

二人は大笑いしていたが、正直興味なかった。

辛うじて口に残ったブラックのはずの珈琲がいつもより甘く感じた。

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ガムシロップは入れてない モンタロー @montarou7

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