第221話 失踪
一同は、特にすることもなく自分の席に着いた。じっとしていられないから、という理由で集まったはいいものの、自分達ができることは何もないのだ。
「……なあ、皆は、どう思う?」
慧悟がふと、訊いた。
「どう、って?」
竜一が振り返る。
「相賀達が怪盗だったこと。そして、伊月が犯罪者だった、ってことについて」
「……そうだなあ」
竜一は天井を仰いだ。
「まあ大田は転校してきたときから偉そうだったけど、木戸達がそんなおっもいこと抱えて笑ってたんだって、そっちに驚いたな。精神力って言うか」
「両親がいないって言ってたけど、病死って言ってたし、嘘には見えなかったよね」
明歩が言うと、愛が頷いた。
「だよね全然わかんなかった」
「けど、結構休んだりしてたよね」
「ああ、そういえば……」
「――とにかくさ」
香澄が口を開いた。
「私は、皆が犯罪者だったとしても、友達でいたい。せっかく出会えたんだもん」
「いいのかよ? 木戸達はともかく、大田は殺人犯なんだろ?」
光弥が顔をしかめる。
「そうだとしても、友達なのは変わりない。大田くん、最近丸くなってたでしょ? だから、根っからの悪人ってわけじゃないと思うんだ。一回、ちゃんと話す必要があると思う」
「それは同意だな」
慧悟が頷いた。
「皆が怪盗になった詳しい理由もまだ聞いてねえし。学校に来てくれればいいんだけどなあ」
ため息をついた、その時。勢いよく教室の扉が開いた。一同が驚いて振り返ると、実鈴が泣きそうな顔をしながら、肩で息をしていた。
「誰か……誰か紬見てない!?」
実鈴にその連絡が来たのは、今から三十分ほど前のことだった。
『紬さんが、登校していないようなのですが……』
「……え?」
実鈴は絶句した。
渋る紬をなだめすかし、なんとか登校させたのが一時間前。それから学校に連絡した。時間を考えれば、もう学校に着いているはずなのに。
実鈴はそれから通学路周辺を探し回ったものの、紬の姿はどこにもなかった。最後の望みをかけて、学校に駆け込んだのだった。
事情を聞いた一同は、紬を探すことにした。
「紬ー!」
「紬ちゃーん! どこだー!」
声を上げ、色んな家や店で聞き込みをするものの、紬の姿はどこにも見当たらない。
ずっと走り回っていた実鈴は肩で息をしながら民家の塀に手をついた。そして、そしてそのまま膝を折る。
「実鈴ちゃん!?」
突然膝を着いた実鈴に、聞き込みを終えて戻ってきた香澄が駆け寄った。
「……私のせいだ。私が捜査に逃げて、紬に構ってあげられなかったから、こんなことに……!」
「実鈴ちゃん……」
涙をこぼす実鈴に、香澄はかける言葉がなかった。ただ、背中をさすることしか出来なかった。
その時、実鈴のスマホが震えた。画面に表示された名前を見て、すぐに電話に出る。
『もしもし? 今から、丘に来てくれないかな』
怪盗Rと怪盗A 瑠奈 @ruma0621
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