TARGET11 怪盗達の正体
第187話 ひとりぼっち
「――もう、相賀と一緒にはいられないよ」
「……えっ」
相賀の口から、思わず声が漏れる。
――今、なんて言ったんだ?
「せやな。そんな事言われたら、今まで通り友達でなんていられるわけ無いやろ」
海音に続き、拓真が頷く。
相賀は真っ暗な空間に立っていた。自分の周りだけが明るく、二人の姿が目の前にある。翔太も、詩乃も雪美も瑠奈も実鈴も、自分を囲むように立っている。それなのに、表情がぼやけて見えない。姿ははっきり見えているのに。
「ずっと騙してたんだね」
「信じてたのに……」
詩乃と雪美の落胆したような声が胸に突き刺さる。
「違う……騙してたんじゃない。けど……」
言葉が、うまく出てこない。
「――もういいよ」
突然、翔太が冷たく言い放った。
「…………!」
「言い訳なんて聞きたくない。君は僕達に嘘をついていた。それは君がどう言おうと変わらない事実だ」
「それは、そうだけど……でも、そうじゃなくて……!」
――言わなければよかった。
そんな後悔だけが相賀の中に渦巻く。
こうなることを一番恐れていたから、今まで言わなかった。黙っていた。けれど、瑠奈達なら――仲間達なら、大丈夫だと思っていたのに。全部受け止めてくれると思っていたのに。
「行こう、皆」
翔太が言うと、瑠奈以外が相賀に背を向けた。
「ま……っ!」
待って、と言いたいのに、口が動いてくれない。足も動かない。
六人はあっという間に暗闇に消えていった。
「……瑠奈……っ」
相賀は縋る思いで瑠奈に手を伸ばした。しかし――瑠奈はその手を払い除けた。
「っ!」
「……最低」
その瞬間、ぼやけていた瑠奈の顔がはっきりと見えた。
その顔には、明らかに軽蔑の表情が浮かんでいた。しかし、目には涙が光っていた。
「……さよなら」
それだけ言い、踵を返して走っていく。
「瑠……っ!」
(なんで……なんで動いてくれないんだよ!)
今すぐ瑠奈を追いかけたい。土下座したっていい、謝りたい。誰に裏切られようと、せめて瑠奈だけには――
体が動かない。見えない何かが相賀に絡みつき、その場に固定するどころか、瑠奈達が行った方向とは逆方向に引きずっていく。
(やめろ……っ! 離せ!)
瑠奈達が自分からいなくなってしまったら。自分は、本当にひとりぼっちだ。
(……そんなの、嫌だ……!)
自分の勝手なエゴだと、そんなことはわかってる。こんなこと言って信じてくれ、なんて馬鹿げている。でも。これ以上ひとりぼっちになるのは――耐えられない。
気づけば、相賀は大声で叫んでいた。
「瑠奈ぁぁぁっ!!」
「――っ!!」
地下室のソファで眠ってしまっていた相賀は飛び起きた。荒い息をしながら周りを見回し、いつもの地下室であることを確認すると、大きく息を吐いてソファの背もたれに体を預けた。
「……くそっ、なんだよあの夢……」
冷や汗で額に張り付いた前髪をかきあげながら一人呟く。
真冬の地下室は恐ろしく寒く、相賀はソファの背にかけていたスタジャンを羽織り、エアコンをつけた。
動き出すエアコンを眺めながら、相賀は、嫌な予感を感じずにはいられなかった。
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