第167話 メール
「くそっ、どこのカメラにも映ってない……あいつらどこに……」
相賀はエアコンもつけずにアジトでパソコンに向かっていた。地下のため恐ろしく寒いものの、相賀は全く気にしていなかった。
何分割にもされたパソコンの画面にはたくさんの防犯カメラの映像が流れている。一時間以上探してはいるが、翔太達の姿は見つけることができない。
(早く見つけないと……あいつが……!)
何をされるかわからない。もうすでに、この世には――
「……っ、だめだ!」
諦めそうになる心を無理やり引き上げる。
絶対に助け出すと決めたのだから。何がなんでも探し出して見せる。
活を入れ直した相賀は再びキーボードを叩き出した。しかし、どうにも集中できない。
ふとパソコンに表示されている時刻を見ると、もう午前三時ぐらいになっている。
「……もうそんな時間か……」
少しリフレッシュしようと立ち上がり、部屋を出ていった。
サッとシャワーを浴び、部屋に戻ってきた相賀がパソコンを見ると、写真が添付されているメールが届いていた。
「メール? 知らないアドレスだ……誰だ……?」
アドレスだけでは、メールの送り主は判別できない。だが、このタイミングの怪しげなメール。十中八九、ベクルックスか一等星の誰かだろう。
……なんだか、嫌な予感がする。だが、このメールを開かなければいけないような気もしている。
専用ソフトでウイルスにかかっていないことを確認し、そっとクリックする。
「――っ!!」
スクロールしてメールに添付されていた写真を見た相賀の顔色が一瞬にして青ざめる。
「嘘……だろ……?」
思考が凍ったように停止する。表示されている写真が信じられなくて、瞬きもできない。まだ暖かかったはずの体温が急速に下がっていった。
その時、もう一通メールが届いた。その通知音でハッとして、慌ててメールを開く。差出人は同じだった。
もう一通のメールに書かれている文章を読んだ相賀の瞳がみるみる怒りに染まっていく。
ダンッ! と拳を思い切りデスクに叩きつける。ボールペンが跳ね、水が入ったコップが倒れそうになるが、そんなことは視界に入っていなかった。
「あいつらっ!」
相賀の口から憎悪と怒りが混じった声が吐き出される。
――まさかこんなことをしでかしてくるなんて思わなかった。
ギリッと奥歯を噛み締めた相賀はデスクにおいてあったスマホを手に取った。
午前三時過ぎ。まだ眠れていなかった瑠奈はベッドに入っていた。なんとか眠ろうとするものの、頭の中には、屋上で相賀が怒り狂う姿がずっとあった。と、枕元に置いていたスマホが震えた。
見ると、怪盗のグループチャットにメッセージが送られている。
「……チャット? 相賀から……?」
もしかして、何かわかったのか――
瑠奈はパスワードを打ち込むのももどかしく、チャットを開いた。
「……!?」
相賀から送られてきたチャットの文面を見た瑠奈は思わず跳ね起きた。
「……どうして……?」
わけがわからない。どうしてそうなるのか。いつもならスムーズに回ってくれる瑠奈の頭脳も、今回ばかりは停止した。
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