第160話 クリスマスパーティー
「よーし! プレゼント交換するぞー!」
翌日。修業式を二日後に控えたLHRの時間。相賀達二年A組はクリスマスパーティーをしていた。
ミニゲームをいくつかしたあと、慧悟がいつもよりハイテンションで声を掛ける。
「男女に分かれて、曲が流れている間プレゼントを回して、止まったときに持ってたプレゼントをもらうってことで」
翼がいつも通り落ち着いた、しかし楽しさが滲んでいる声で説明をした。
「スタートするぞー」
男女に分かれて輪を作ったところで、永佑が自分のスマホを操作した。流行りのアイドルソングが流れてきて、相賀達は各々が用意してきたプレゼントを回していく。
「……ストップ!」
永佑が曲を止めたとき、翔太の手には小ぶりのラッピングされた包みがあった。大きさの割には少し重さを感じる。
「お、高山のそれ俺のだ」
紙袋を持った光弥が言った。
「あ、そうなんだ」
「じゃあ開けようぜ!」
竜一が声をかけ、一同はプレゼントを開け始めた。
「え、これかわいい!!」
香澄が珍しく大声を上げている。
「…………」
翔太の袋から出てきたのはマグカップとハンカチのセットだった。落ち着いた青と紺のチェックが両方に入っている。男性が持っていても違和感のないチェックだ。
「……翼、これお前が着けるから似合うやつだろ」
中学生が着けるには少し大人びている手袋を持った慧悟が苦笑している。
「そう?」
パズルゲームを持った翼が首を傾げている。
「……確かにな」
文房具セットを持った光弥も同意した。
「うわあ、可愛い!」
「あ、雪美ちゃんに当たったんだ!」
雪美に当たった雪の結晶のモチーフが付いた髪ゴムは明歩が買ったものだった。そう言う明歩は、瑠奈のマフラーが当たっている。
「これ、香澄ちゃん?」
そう訊いた詩乃の手には、ラベンダーの香りのハンドクリームとクローバーの刺繍が入ったハンカチがある。
「そう! よくわかったね」
「だって香澄ちゃん、お花とか好きだからもしかしたらと思って」
「バレてたか」
香澄がぺろっと舌を出す。
「……やっぱり、あいつ来なかったな」
ひとしきり盛り上がったあと、翼がため息をついた。
「だよなぁ」
慧悟が頷く。最早、名前を言わなくてもわかるくらいになっていた。
「ま、こういう系は来ないだろうな。大田がプレゼント持ってくるなんて、天地がひっくり返るぜ」
竜一が冗談交じりにため息をついた。
翔太はフッと表情を暗くした。
「……あ、また雪が」
ふと、窓の外を見た海音が口を開いた。青空が覗いてはいるものの、小さな雪が舞っている。
「ホンマや。昨日も舞っとったよな」
拓真が窓に近づいた。
「この一週間くらい、降ったり止んだりするらしいな。積もるかどうかはわからないけど」
プレゼント開封を眺めていた永佑も近寄ってきた。
「……そう言えば先生、先生ってああいうアイドルソング好きなんですか?」
「へ!?」
慧悟に茶化された永佑が素っ頓狂な声を上げる。
「そう言えば確かに」
「先生、教えてよ!」
光弥が頷き、香澄が迫ってくる。
「いや、あれは俺じゃなくて、娘が……」
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