番外編 星に願いを

「相賀、何してるの?」


 課題をしていた瑠奈が息抜きをしようとベランダに出ると、隣の家のベランダに幼なじみの姿があった。ベランダの手すりに両腕を乗せ、ぼんやりと夜空を見上げている。


「観察だよ。今日はペルセウス座流星群が見える日なんだ」


 相賀は空から目を離さずに答えた。


「へー……」


 瑠奈は相賀の横顔を少し見つめ、空を見上げた。濃紺の夜空に大量の星が輝き、天の川を横切るように流星群が流れていく。


「あ、流れた」


 瑠奈が思わず呟くと、相賀は瑠奈を見た。


「夜空全体を眺めるように見るとよく見えるぞ。今日は新月だからいつもより星が見えるんだ。これぐらい見えるのなんて、この地域ぐらいだな。町外れの丘、今日は天体マニアが大分集まってるみたいだぜ」


「やっぱり有名なんだ」


「ああ。俺も小さい頃、ここの特集をテレビで見たことあったからな」


 しかし、その言葉は瑠奈には聞こえていなかった。相賀のアドバイス通り夜空全体を見るようにしたら、信じられない量の流星群が見えるようになったからだ。


「キレイ……」


 相賀は空を夢中で眺めている瑠奈を優しく見ていた。


(……こういう日が、ずっと続けばいいな)


 星に願いを――――

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