TARGET9 裏切り者は誰?
第112話 欠席
「余計な作戦入れてきやがったな」
某ビルの廊下でベクルックスと鉢合わせしたフォーマルハウトはベクルックスを睨みつけた。
「あいつを惑わせるための、前から計画していたものだ」
「知らねぇよ。俺が一等星になったのは最近なんだからな」
怒りのためか、フォーマルハウトの口調がいつもより荒い。
「……だから貴様を参加させなかったんだ。別にいつでもいいだろ。今日にでもやればいい」
「ああ、そうさせてもらうよ!」
吐き捨てたフォーマルハウトが憤然と去っていく。
「……まあ、奴らを釣るエサにはなるか……」
ベクルックスは静かな声で呟いた。
廊下を大股で歩くフォーマルハウトはスマホをポケットから取り出して電話をかけた。
「……ベテルギウスか? 至急頼みがある」
『ああ? お前が頼みなんて珍しいな』
「お前しか頼めるやつがいないんでな」
五階建てのビルの一室でソファに座って電話をしていたベテルギウスはハッと笑い、ソファに体を預けた。
「随分おれも買われたものだな。いいぜ。頼まれてやるよ」
『変わらないな。その上から目線の発言。それで――』
タバコを吸いながら話を聞いていたベテルギウスは体を起こした。
「なんだ。もうスパイやめるのか?」
『ああ。そろそろ潮時だと思ったんでな』
「お前の情報提供、結構役に立ってたんだぞ」
『それはベクルックスがやればいい』
「それもそうだな。わかった。用意しておく。で、いつだ?」
『一週間後くらいだ。詳しい日時はまた連絡する』
ベテルギウスは吸い終えたタバコを灰皿に押し付けた。
「また急だな。ま、いいぜ」
『助かる』
フォーマルハウトはそれだけ言って電話を切った。
ベテルギウスはタバコをくわえながら再びソファに寄りかかった。そしてライターでタバコに火を点ける。
「面白くなってきやがったなぁ……」
一人呟き、ニヤリと笑った。
「……」
相賀は真っ暗な地下室のソファに座っていた。両足に肘を付き、組んだ手に額を乗せている。テーブルに置かれたノートパソコンの画面の光だけが灯っていた。
ノートパソコンの画面にはプラネットのホームページが映っていて、右側に社長の大沢昴が笑顔で載っている。
「くっそぉ……!!」
相賀は毒づきながら目の前のテーブルを両拳で叩いた。
「どうして俺は……こんな……っ……」
足を上げ、ソファの上でうずくまる。
「母さん……どうすればいいんだ……」
相賀の声が震える。パソコンの光が、虚しく相賀を照らしていた。
「……木戸は今日も休みか」
出席を取っていた三浦永佑は息を付き、教室から出ていった。
「……相賀、どうしたんだろう」
席に座っていた石橋瑠奈は頬杖を付きながらため息をついた。
「一週間くらい来てないよね」
中江詩乃も目を伏せる。
「……」
高山翔太は机に両腕を乗せ、じっと一点を見つめていた。
「やっぱり、この間の……」
渡部海音が口を開いた。
「やろうな。あれ以外、特になかったやろ」
林拓真も頷く。
「木戸君の家行っても誰も出てこないしね……」
うつむいた朝井雪美は小さな声で言った。
「しかもこの間、合鍵返しちゃったんだよね……タイミング悪いなぁ」
瑠奈は机に突っ伏してぼやいた。
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