第110話 ボスの正体

 相賀はある部屋にいた。壁一面がガラス張りになっていて、部屋の中央に豪華なデスクが置かれているそこは、相賀がベクルックスに連れてこられたボスの部屋だった。


 相賀が窓の外を見ると、東の空は白み始めていて、天の川も薄く見える。


「多分あいつ、幼い頃から組織の仕事してきたから、今までろくに学校に通ってないんだよ。だから人と上手く関われない。命令する立場だったから協調できない。けど、ちゃんと人と関わったから自分がどういう態度取ればいいかわからないんだよ」


『流石、人間観察が上手いわね。まあ、私も大体同意見よ。流石に怪しかったから小学校の通知表を調べてみたんだけど、やっぱり出席日数は極端に少なかったわ。成績自体は良かったから進級できてたみたいだけど』


『相賀? もう帰らないと……』


 実鈴が言い終わると同時に、スマホを当てている耳とは逆の耳にかけた通信機から瑠奈の声が聞こえた。


「……ああ」


 相賀はスマホを押さえて通信機に返事をした。そして再びスマホを耳に当てる。


「とにかく、俺はしばらく様子を見る。調べるのはそっちで頼む」


『わかったわ』


 電話を切った相賀はくるりと振り返り、部屋を出ていった。



 ビルから脱出したベクルックスは本部のビルの一室にいた。


 薄明かりが窓から差し込むだけの部屋の中央に置かれたテーブルに頬杖を付き、椅子に座って虚ろな目でぼんやりしている。


 と、突然部屋の扉が開いた。


 驚いたベクルックスが椅子をひっくり返すほどの勢いで立ち上がる。


 部屋に入ってきたのは――組織のボスだった。


「貴様、あの態度は何だ?」


 組織のボスが訊くと、ベクルックスはうつむいた。


「……オレにもわからないです。アルタイルに当たったのに驚いたのか外したオレに腹が立ったのかとは思いますが……」


「貴様は最近、気が緩んでいる。叩き直せ」


「……了解です、――父上」


 その時、窓から朝日が差し込み、ボスの顔に当たった。それに照らされた顔は――『プラネット』のボス、大沢おおさわ佳月かつきだった――。



「……皆に、話すことがある」


 アジトに戻った相賀は重々しい口調で切り出した。


「どないしたんや」


「……話してくれるの?」


 拓真が首を傾げ、瑠奈が意外そうに訊く。


「話すことは話すよ。……組織の、ボスの話だよ」


「誰かわかったの!?」


 詩乃が身を乗り出してきた。


「ああ、会わされたんだよ。――単刀直入に言う。組織のボスは、『プラネット』の社長、大沢佳月だ」


「え!?」


 大声を出したのは海音だった。座っていたソファから立ち上がり、呆然と相賀を見つめる。


「……それ、本当?」


「ここで嘘言うわけないだろ。そして、伊月は佳月の息子だ」


「!?」


 その場にいた全員が目を見張る。


「そうか……だから中学生ながら幹部にいたのか」


 翔太が冷静に言った。その右頬には絆創膏が貼られている。


「そういうことだ」


「けど……どうして、木戸君だけにそれを知らせたの?」


 雪美が訊くと、相賀はうつむいた。


「……さあな。俺にもわかんないよ」


 ぶっきらぼうに言った相賀はソファに座り直した。


「とにかく、もう朝だ。そろそろ帰らないとヤバいぞ」


「……うん、そう、だね」

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