第108話 疑問
「うるさい奴らだ……」
ベクルックスは舌打ちをした。
「早く片付けろ!」
「了解」
アルタイルが目にも止まらぬ速さでRとUに蹴りを叩き込む。
「きゃっ!」
「うっ!」
更にシリウスもTとXを吹き飛ばす。
「がはっ!」
「っ!」
「皆……っ」
相賀はくっと奥歯を噛み締めた。
「……なせ」
「あ?」
ベクルックスが相賀に目を向ける。
「離せ!」
相賀はベクルックスの腹に蹴りを放った。
「がはっ!」
ベクルックスがよろけ、相賀の胸ぐらから手を離す。
「俺は……お前達の思い通りにはならない! 俺は怪盗Aだ!」
ベクルックスの手から逃れた相賀は凛とした瞳でベクルックスを睨みつけた。ベクルックスが腹を押さえながら苦々しげに相賀を見る。
「相賀……」
もとに戻った相賀を見てR達は微笑みながら立ち上がった。
「……チッ。大人しく言うことを聞いていればいいものを……やれ!」
ベクルックスの合図で、黒服達は一斉に怪盗達に襲いかかった。
「なめんなや!」
「こっちはもう全員揃ってるんだからね!」
構えを取った怪盗達も勢いよく黒服達を倒していく。
『実鈴達を呼んだ! あと十分ぐらいで到着する!』
Kが叫んだ。
「OK!」
返事をしたRは「A!」と相賀に何かを投げた。それはサングラスだった。
「サンキュー」
サングラスをかけた怪盗Aはどんどん黒服達を吹き飛ばしていく。
それを苦々しげに見ていたベクルックスは、ふとジャケットの内ポケットから拳銃を取り出した。そして構え、息を静かに吐きながら撃つ。
銃口から飛び出した弾はXの頬を掠めた。
「っ!」
Xが驚いて振り返る。
(クソッ……外れやがった)
ベクルックスは舌打ちして再び銃口をXの頭に向けた。
「殺らせねぇよ!」
「ぐはっ!」
それに気づいたAがベクルックスの死角から飛び蹴りをかけた。諸に食らったベクルックスが数歩後ろによろける。
「……うぜぇ」
毒づきながら体制を整えたベクルックスは疑問を感じていた。
(……何でさっき、外れた?)
ベクルックスは組織の中でも有数の射撃の腕を持っている。余程のことがなければ外れることはないはずだ。
(まさか、無意識に外した?)
邪魔も入っていないあの状況で、外した理由はそれ以外思いつかない。
(……何で)
ベクルックスは拳銃を持つ手に力を込めた。
「くそっ!」
歯噛みしたベクルックスは闇雲に拳銃を構え、撃った。
放たれた弾はAを大きく逸れ、アルタイルの頭を掠めた。
「ぐあっ!」
「なっ……!?」
アルタイルがバランスを崩し、Aとベクルックスが目を見張る。
「お前何を……!?」
「違う……違う!」
拳銃を取り落としたベクルックスは頭を抱えた。
「ベクルックス!!」
ベガが叫ぶ。
「違うんだ!!」
ベクルックスの絶叫は狭い廊下に虚しく響き、その場にいた全員がベクルックスを呆然と見つめた。
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