第106話 脱出
「……じゃあ、さっきのフォーマルハウトは……」
「ベクルックスの変装ってこと!?」
「そうなるな」
三人が難しい顔をする中、体を起こした相賀はうつむいていた。
さっき、組織のボスに言われたことを仲間達に伝えることはできない。きっと見捨てられてしまう。相賀はそれが一番怖かった。
「相賀……? 顔色悪いよ? 何かあったの?」
Rが心配そうに訊いてきた。
「せやな。相賀だけ別にされとったってのもおかしな話や」
Tも相賀の顔を覗き込んでくる。
「……いや、何でもないよ。俺にも理由はわからないから」
相賀は顔を上げ、笑ってみせた。
(……このことは、全てが終わったら話そう)
そう、心に決めて。
(……絶対、何かあった)
全員がそう思った。相賀の笑顔が引きつっていたからだ。
「……相賀は、ああ言ったら動かないんだよ」
ヘッドセットを外したKは小さく言った。
「……心配だよね」
Yもヘッドセットのマイクを手で覆いながら頷いた。
「とにかく、これで相賀があいつらと何らかの関係があることがはっきりしたね。後で調べてみよう」
Kはヘッドセットをつけ直し、キーボードを叩き始めた。
「相賀、これからどうするつもり?」
Rが尋ねた。しかし、相賀はうつむいている。
「……あ、ごめん。何?」
少しの間のあと、顔を上げた。
「……ねえ、本当にどうしたの? ずっと上の空だよ」
「何でもないって。心配すんな」
「でも――」
Rが食い下がると、
「放っといてくれよ!」
突然相賀が怒鳴った。
T、Uが驚いて振り返る。
「……頼むから……訊かないでくれ……」
今にも泣きそうな相賀の声に、Rは黙り込んだ。
「……ごめん」
小さな声で謝ったRは相賀に背を向けた。
(ごめん……ごめんな瑠奈……)
相賀はギュッと拳を握りしめた。
その時――バンッと扉が開いた。驚いて扉を見ると黒いマントが
「ここにいたのか。手こずらせないでよ」
軽い口調。白い画面――――。
「なっ……翔太!?」
相賀が身を乗り出す。
「何で……」
「何か嫌な予感がしてさ。Kに連絡を取って来たんだよ」
Xは飄々とした様子で部屋に入ってきた。そして手に持った鍵で手錠を外していく。
「……ねえ、X、その仮面……」
Rがハッとして尋ねた。
Xの仮面に大きなヒビが入っていたのだ。
「ああ……アルタイルの拳が当たってさ。ほんとにあいつ、会うたびに強くなってるから厄介だな」
Xは軽く笑うが、相賀はXの頬に血がついた跡があるのに気づいていた。
「さあ、脱出するよ」
Xは最後にTの手錠を外し、立ち上がった。
「K、脱出ルートのナビ頼むわ」
『OK。ありがとうX』
「……まあ、仲間だしね」
Xは頷いた。
『防犯カメラはなんとか復活させたけど、いつ妨害されるかわからない。すぐに行って!』
「OK!」
返事をしたRは廊下に飛び出した。
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