第105話 秘密の話
男は立ち上がり、相賀に顔を向けた。相賀がくっと唇を噛みしめる。
「やっぱり、組織のボスはお前だったか……」
「予想できていたのか。流石だな。――……」
「え?」
相賀は男が放った言葉に目を見張った。続く男の言葉に、どんどん血の気が引いていく。
「嘘……だろ……?」
がくりと膝をついた相賀は呆然と呟いた。その横で、ベクルックスの唇に笑みが浮かぶ。
話し終えた男は満足気に笑みを浮かべた。
「ベクルックス、連れて行け」
「はい」
頭を下げたベクルックスは相賀の手錠の鎖をつかんで立ち上がらせ、部屋を出ていった。相賀は抵抗する力もなく引きずられていく。
扉が閉まり、男は窓の方を振り返った。
「さて……お前は何を選択するのか……」
小さく呟くと、デスクについた。
フォーマルハウトを探すために三階に向かったR、T、Uはアルタイルとベガと交戦していた。いつものように拳を振るうアルタイルとは対象的にベガはゴム弾を装填した二丁拳銃を扱っている。
「ゴム弾だからまだいいけど……厄介すぎよ!」
Rは回し蹴りを繰り出しながら苦言を
ベガの放つ弾は、ゴムとはいえ当たればアザができそうなほど痛い。
「そんなのでやられるような奴らか?」
アルタイルは挑戦的に言いながら回し蹴りを繰り出した。
「くっ!」
Tはバックステップで蹴りを避け、正拳突きを打ち込んだ。しかし、アルタイルはそれを難なく片手で受け止める。
「っ!」
「遅い。疲労が溜まってきたか?」
ニヤリと笑ったアルタイルはTの腹に蹴りを叩き込んだ。
「がはっ!」
吹っ飛んだTは床に叩きつけられた。
「T!」
駆け寄ろうとしたUにゴム弾が襲いかかる。
「やめなさい!!」
RはUの前に飛び込み、ゴム弾を払い落とした。
「っ……」
払い落とした手に痛みが走る。しかしRはその手をギュッと握りしめ、ベガに突進する。
「……そろそろね」
ベガは後ろにジャンプしてRの拳を避けた。
「あんた達、まだ気づかないの?」
「何によ!?」
「敵はアタシ達だけじゃないのよ?」
ベガが笑みを漏らした瞬間――側の扉から誰かが飛び出してきた。
「な!?」
立ち上がっていたTが慌てて飛び退る。
飛び出してきたのは――シリウスとプロキオンだった。
「嘘……」
Uが呆然と呟く。もう三人とも体力は残っていない。
『皆逃げて!!』
KとYが叫ぶと同時に、四人は怪盗達に襲いかかった。
捕らえられた三人は石造りの部屋に放り込まれた。後ろ手に特殊な手錠をかけられていてピッキングもできない。
『何か脱出する方法は……』
通信機からKとYの焦っている声が聞こえてくる。
しかし、三人は黙ってうつむいていた。
「……これから、どうしよう」
長い沈黙の後、ようやくRが口を開いた。
「……せやな……」
「相賀君が見つかればよかったんだけど……」
TもUも歯切れの悪い返事をする。
その時、部屋の扉が開き、誰かが部屋の中に倒れ込んだ。それは――相賀だった。
「相賀!?」
「う……」
三人が慌てて倒れた相賀に駆け寄る。そして相賀を部屋の中に突き飛ばしたベクルックスはフフフ……と笑い出した。
「仲間だの何だの言っておきながら、偽物と本物の区別もつかないなんてなぁ! 笑わせるなよ!」
ベクルックスは笑いながら部屋を出ていった。
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