第103話 ハッキング

「これからどうするつもり?」


 床に転がっていた通信機を拾い、耳につけたRは尋ねた。


『まず、相賀を探そう。今映ってるカメラを探して――え?』


 Kが話の途中で素っ頓狂な声を上げた。


『何で……まさか!』


 ハッとしたような声とともにキーボードを叩く音が聞こえてきた。


「どないした?」


『ハッキングされてるの! 防犯カメラの映像が全部消えちゃった!』


「え!?」


『僕がハッキングのためにプログラムに開けた穴が塞がれたんだ! こんなことができるのはあいつしかいない!』


「デネブ……」


 Rが小さく呟く。


『今回は三幹部もいるのか……! このままじゃ……!』


 Kが歯噛みしながら言う。


「それでも」


 Rが口を開く。


「やるしかない。相賀から直接話を聞かないと」


「……せやな」


「うん」


 二人が頷く。


『……わかった。僕達はカメラを復旧させるから、皆はとりあえず三階に向かって。映像が切れる直前、銀髪が見えたんだ』


「ベガのことね」


『皆、気をつけて!』


「OK!」


 Yに返事をしたR達は階段に向かった。



「……これは……どういう……」


 デネブが操作するパソコンの画面を見たアルタイルが呆然とフォーマルハウトを見る。


 フォーマルハウトがフッと笑みを浮かべる。


「計画の内だ。わざとベガの姿を映してからハッキングした。あいつらはそれに誘われてこっちに向かってる。そこだ」


「わかりました」


 アルタイルが部屋を出ていく。


(……そろそろか)


 フォーマルハウトは一瞬目を伏せると、部屋を出ていった。



 フォーマルハウトはまた相賀が眠っている部屋に来ていた。キーパッドに暗証番号を打ち込み、指紋を認証させる。扉が開くと――ベッドの上に座った相賀がフォーマルハウトを見ていた。



「う……」


 眠っていた相賀はゆっくり目を覚ました。見覚えのない天井が目に入り勢いよく体を起こした。右手が何かに引っ張られ、見ると手錠がはめられている。


「……何で……」


 まだ記憶がはっきりしない。


 目を閉じていると、徐々に頭の中の霧が晴れてきた。


「! そうだ、俺は……!」



 ビルに潜入した時――AはUと一緒に廊下を走っていた。


 と、右手側の扉の奥から何か物音が聞こえ、足を止めた。


「……U、ちょっと――」


 声をかけながら前を見るが、Uは気づかずに走っていく。


(……確認してから追いかけるか)


 AはUを引き止めるのをやめ、ドアノブに手を伸ばした。すると、扉が開き、Aは伸ばした手を掴まれて引きずり込まれた。


「な!?」


 Aは目を見開き、引きずり込まれないように足を踏ん張った。しかし、力に負け、部屋の中に入る。


 突然手を離され、前によろめいたとき――体中に激しい痛みが走った。


「がはっ!」


 激しく痙攣したAは膝から崩れ落ちた。


 暗くなっていく視界に誰かの足が映る。


(クソ……誰……だ……)


 Aはそのまま気を失った。

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