第95話 救出劇
「はぁっ!」
「ぐはっ!」
サングラスをかけて顔を隠した瑠奈は回し蹴りで男を吹っ飛ばした。
『このビルにいるのは二十人くらい。今の人で十五人だよ!』
「ってことはあと五人か……海音のところにいる可能性が高いな」
頬に流れた汗を拭った相賀は険しい表情をした。
「雪美、渡部君の場所わかる?」
瑠奈が息を整えながら訊いた。
『ううん……防犯カメラが復活しないの。やっぱり私の技術じゃ……』
「弱気になっちゃだめ!」
「とにかく探すしかないやろ」
そう言った拓真が走り出した。
「おそらく奴らは、アジトを移動しようとしてたんだ。書類とかがほとんど段ボールに詰められていたしな。だから、残っている男達の近くに海音がいる可能性が高い」
拓真を追いかけながらも、相賀が冷静に判断する。
その時、先に十字路を曲がった拓真が「なっ……!?」と声を上げて立ち止まった。
「どうした? 拓――」
尋ねながら曲がった相賀、瑠奈も言葉を失う。通信機から雪美が息を飲む音が聞こえた。
通路の先には――残っていた男が五人いた。一番前に立っているサングラスの男が後ろ手に縛られている海音の襟首を掴み、首筋にナイフを突きつけている――!
「海音!!」
相賀が思わず絶叫する。
「皆……! 来ちゃだめだ! 逃げて!」
「黙ってろ!」
サングラスの男は身を乗り出して叫ぶ海音の襟首を引っ張った。
「うっ……」
首が締まった海音の顔が歪む。
「テメェ……!!」
相賀の顔が怒りに染まる。
(どうすれば……!)
瑠奈の頭の中で色々な考えが飛び交うが、どれも海音を危険に晒すようなものしかない。
『海音君……っ!!』
雪美の悲痛な声が聞こえる。
「取引だ。お前ら、警察呼んでるんだろ? それを取り消して俺達のことを見逃すって言うなら、このガキを解放するのも考えなくはない」
サングラスの男がニヤリと笑う。
「っ……」
海音の首筋に押し付けられたナイフの下から一筋の血が流れた。
「でたらめ言うなや! 今すぐ海音を解放せい!」
拓真が怒鳴る。
「そんなのできるわけねぇだろ? こいつは大事な人質だ。にしても、お前らがいくら強くてもこいつ一人使うだけで動けなくなるなんてな」
相賀は嘲笑う男を睨みつけた。しかし、海音を人質に取られている今の状況では、確かに動けない――。
(え?)
急に海音が何かに気づいた顔をした。やがてその口にそっと笑みが浮かぶ。
(そういうことか……わかったよ)
その時、サングラスの男の隣にいた長髪の男が手刀を振り上げた。次の瞬間、サングラスの男の体から力が抜け、ガクリと膝をつく。ナイフが床に落ち、甲高い音が響いた。
長髪の男はサングラスの男から解放された海音の肩を掴み、くるりと相賀達に背を向けた。
「なっ……テメェ何してんだ!」
後ろにいた男三人が目を見張る。
「え?」
相賀達は思わず目を見張った。海音を縛っていたはずのロープが――ない。海音の腕は後ろに回されているだけだ。
「何って……そりゃあ……」
長髪の男はつけていたカツラを取り、スーツのジャケットを脱ぎ捨てた。長い前髪の下で白い仮面が光り、その奥から鋭いオッドアイが覗く。
「僕はこっち側だからね!」
「高山!?」
海音以外の一同が驚く。
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