第90話 文化祭二日目②

 その頃。中学校から少し離れた路地に数人の男達が集まっていた。


「あっちの状況は?」


「まだ終わりそうにねぇな。一時間はかかるぜ」


「時間が押してるらしいんだ。まあ、待つしかねぇな」


 男達は頷き合うと中学校の方向に鋭い目を向けた――。



「こんにちはー! 吹奏楽部です!」


 ステージでは有志の発表が終わり、吹奏楽部の演奏が始まった。


 明歩、詩乃、香澄を含めた十人ほどが楽器を持って立っている。


「では早速、演奏を始めさせていただきます! 一曲目は『華火はなび』です! アップテンポの元気な曲で、吹いている方も聴いている方も楽しめる曲になっています! それでは、どうぞ!」


 司会をしていた一年生の女子が席に戻り、クラリネットを構える。


 指揮棒を構えた顧問がゆっくり腕を振ると、香澄のフルートとクラリネットの静かなメロディが流れ出す。と、すぐに顧問は勢いよく両腕を上げた。それを合図に全ての楽器が鳴り出す。かっこいいドラムに合わせ、詩乃のトランペットや明歩のホルンがメロディを奏でる。


 客席からは自然と手拍子が始まる。


 そして曲が終わると、客席からは拍手が沸き起こった。


 吹奏楽部はその後も、懐かしの曲や流行りの曲など、五曲ほどを演奏した。


「これで、本日の演奏は以上となります。本日は本当にありがとうございました!」


 司会の一年生が叫ぶと、立ち上がった部員は「ありがとうございました!」と声を揃え、頭を下げた。ステージの幕が閉じ、客席から大きな拍手が沸き起こったかと思うと、すぐにアンコールを求める手拍子が始まった。


 ステージの幕が再び開き、司会の一年生が前に出てくる。


「ありがとうございます! それではアンコールにお答えして、吹奏楽定番の曲、『宝島たからじま』を演奏いたします! 皆さんもぜひ手拍子で盛り上がってください! それでは、どうぞ!」


 司会者が席に戻ると同時にパーカッション担当の三年生がアゴゴベルを持ち、特徴的なリズムを叩き出す。それに合わせて手拍子も巻き起こった。


 明歩のホルンの高音が鳴り響き、詩乃のトランペットや香澄のフルートがメロディを力強く奏でていく。


 やがて宝島が終わり、大きな拍手が体育館に響いた。


「ありがとうございました!!」


 吹奏楽部一同が頭を下げると、更に拍手が強くなった。



「すごかったね! 演奏」


「ああ、そうだな」


「アンコールに宝島を持ってくるのは、流石安井やすい先生だね」


 発表が終わり、校庭に出た瑠奈が言うと、相賀と海音は頷いた。


 瑠奈、相賀、拓真、雪美、海音、翔太は校庭に出ていた。地域の人やPTAの人が出した出店が並んでいる。


「わぁ、すごい!」


 雪美が顔を輝かせる。


「出店なんて去年あったか?」


「去年は予算がどうとかでなかったような気がするな」


 拓真と相賀が話す中、瑠奈と雪美は近くにあったソフトクリーム屋に近寄った。


「あ……そういえばあの二人、甘いもの好きだったな」


 自分達を放ったらかしにしてソフトクリームを買う二人に、相賀は苦笑いした。

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