TARGET7 敵の本拠地へ!

第51話 不穏な動き

「ミルキーウェイ号で行われる船上パーティー?」


 某ビルの会議室。黒スーツを着たいかつい男達が長机に座る前で、大田伊月――ベクルックスの言葉をアルタイルはオウム返しで訊き返した。


 部屋の電気は消され、正面の壁に掛かる大型モニターだけが部屋をぼんやりと照らす。モニターには怪盗R、怪盗A、怪盗T、怪盗U、怪盗Xが映っていた。


「ああ。来月の初めに開かれるらしい。ある財閥の当主の誕生日パーティーだ。そこで行われるオークションに、日本最大のブルーダイヤが出品されるという情報を掴んだ」


 ベクルックスはそう言い、椅子に座ってパソコンを操作しているデネブをチラリと見た。


 デネブはそれを無視し、口を開いた。


「……ボスからの連絡だ。奪って来いと」


「でも、おかしいと思わない?」


 ベガが口を開いた。


「何でボスは宝石にこだわるの? 絵とか美術品でも、価値のあるものはたくさんあるじゃない」


 ベガの言うことは最もだった。


「ボスが宝石コレクターだからだ」


 ベクルックスが答えた。


「奪わせて、それが気に入れば自分のものにするんだろう。それに、今回のブルーダイヤは特別らしいからな」


 ベクルックスはそう言い、デスクに置いた資料に目をやった。


 その資料の上部には、『ミルキーウェイ号 所有者 渡部わたべ響希ひびき』と書かれていた――。


「で? 俺達は何をしろと?」


 声を上げたのは――フォーマルハウトだった。部屋の隅の方にいるため、顔は見えない。


「……後で指名するメンバー、変装でもしてミルキーウェイ号に乗り込め。自分とベガも行く。指示はデネブがここから出す」


「今回はブルーダイヤが目的だが、他にも奪うものがある。―――だ」


 ベクルックスがアルタイルに続けて言った。途端にどよめきが起こる。


「ええ!?」


「どういう……?」


「あの怪盗共を潰すため、それと、アクルックスを連れ戻すためだ」


 ベクルックスは短く言うと、不気味な笑みを浮かべた――。



「え? 誕生日パーティー?」


 渡部海音に話を持ちかけられた木戸相賀は思わず訊き返した。


「そう。来月、お父様の誕生日パーティーを渡部財閥が所有するミルキーウェイ号でやるんだけど、もし良かったらと思って」


「そんなんにオレらが行ってええんか?」


 相賀と一緒に話を聞いていた林拓真が言った。


「大丈夫だよ。そこまで堅苦しいパーティーじゃないし。と言っても、色んな会社の社長とかが呼ばれはするけどね。兄さんも桜音も友達呼ぶらしいし、お父様にも許可はもらってるから」


「そっか。でも、俺スーツとか持ってないぞ?」


「僕が貸すから大丈夫。でも、船で一泊二日になるから、そこは要相談だけど」


「わかった。オカンに聞いてみるわ」


「俺は多分大丈夫だ」


 二人が頷くと、海音は柔らかい笑みを浮かべた。


「せっかくだから怪盗達皆で行きたいなって思ってるんだけど……」


「瑠奈達もってことか。いいんじゃないか?」


 相賀はすぐに頷いた。


「じゃあ誘ってくるよ」


 海音は嬉しそうに笑い、三人の元に歩いていった。



 その夜。


 地下室で頬杖をついてパソコンを操作していた相賀は急に目を見開いた。


「なっ……!?」


 座っていたキャスター付きの椅子がひっくり返るほど勢いよく立ち上がる。


「な……何で……」


 呆然と呟く。


 しばらくその場に立って硬直していた相賀はやがてひっくり返った椅子を起こし、座り直した。そして猛然とキーボードを叩き始めた。



「今日からテスト二週間前だ。計画表と範囲表を配る。それからちょっと先の話だが、高校に進学するとき内申点も重要だからな。一回一回のテストを大事にしろよ」


 六月上旬。三浦永佑はそう言いながらプリントを配った。

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