第42話 二人の探偵
「ええ、そうです。犯人は貴方ですよ、
「え!?」
実鈴に名指しされた、ハーフアップの眼鏡をかけた女性は目を見開いた。
実鈴はある屋敷に来ていた。この屋敷で殺人事件が起こり、駆けつけた
「そ、そんな! 私はやってないわよ!」
山田が必死に反論する。
「いいえ、この犯行は貴方にしかできないんです。なぜなら――」
「ちょっと待ってもらおうか」
実鈴が説明しようとしたとき。突然、気取った声が実鈴を遮った。
「……どうしてここにいるの?」
実鈴が訝しげな視線を向けたのは――大田伊月だった。
「犯人は違う。――お前だ」
実鈴を無視した伊月が指差したのは――山田の隣にいた背の高い男性――
「え……?」
急に名指しされた飯島は一瞬動揺したが、すぐに冷静さを取り戻した。
「どうして? 僕は、
「いや、ある。この事件の発端となった、二年前に女子大学生が車にはねられた事故。あれは西村に酷いフラレ方をした女子大学生が自殺したもの。その女子大学生は、飯島の妹だったんだよな?」
「え!?」
実鈴と飯島が声を上げる。
「正確には、両親の再婚によってできた義妹。しかもその両親もすぐに離婚したし、再婚のことは届け出もしていなかったらしいから、知らなかったのも当然だ。そして、西村を取った山田に罪をなすりつけようとした。――違うか?」
呼び捨てで推理を披露する伊月に実鈴は怪訝の目を向けた。しかし、伊月はまたもそれを無視した。
「じゃあ、証拠は?」
平然とした飯島が尋ねる。
「再婚の事実はお前の母親に聞いて裏を取っている。西村のジャケットのチャックに、服の繊維が絡まっていた。飯島、お前が着ているセーターの繊維がな」
飯島は白いハイネックのセーターを着ていた。
「それは、僕が西村を殺したときについたものとは限らないだろ?」
「違う、お前が西村を殺してないならつかないはずなんだ。お前が西村と最後に会ったのは一週間前。そしてその時も、今日会った時も、西村はジャケットは着ていなかった。それ以降西村はずっとこの家の中にいたのだから、ジャケットは着ていない。じゃあ、お前のセーターの繊維はいつつくんだ? 殺したとき以外考えられない」
「え」
飯島が初めてあからさまに動揺を見せる。
「遺体はジャケットがかかったラックの側にあった。お前が西村の首を絞めたのはラックの側だったんだろ。首を絞められたら、当然暴れて抵抗する。そのはずみにジャケットのチャックがセーターに引っかかったってとこだろ。それと、山田に罪を着せるために、山田の部屋に西村の首を絞めたロープか何かを隠しているはずだ。それにはお前の血液が付着している」
「なぜそう言い切れる?」
「そういうことね」
実鈴が悔しげに言った。
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