第39話 疑念
「ハアッ!」
回し蹴りで二人を吹っ飛ばしたRはジャンプしてTの肩を掴み、くるりと回って着地した。Tと背中合わせの状態になる。
「任せたよ、T!」
「そっちもな、R!」
声を掛け合った二人は警備員達の波に突進していった。
屋上にいたAは見ていたタブレットをウエストポーチに入れた。
「あの警備員の量は異常だ。二人じゃ手に負えないかもしれない。俺達も行こう」
「うん!」
AとUが頷きあったとき――『A、U、逃げて!』とYが叫んだ。
それとほぼ同時に屋上のドアが開き、警備員が流れ込んできた。
「まだいたのか!?」
「嘘……」
Aが目をむき、Uが呆然と呟く。
『やられた……。とにかく逃げろ! 全員だ!』
「でも!」
『伊月が探偵ならターゲットの情報も掴んでるだろ! これ以上粘ってもやられる!』
Kがいつになく必死に叫ぶ。
Aはギリッと奥歯を噛みしめた。
「……わかった」
小さく言うと、ウエストポーチから催眠弾と閃光弾を素早く取り出して地面に投げつけた。
閃光と煙が辺りを覆う。
RとTも催眠弾と閃光弾をばらまいた。
煙と閃光が消え、警備員達がRとTを探す中、伊月は一人ほくそ笑んだ。
「僕達のパソコンに映っていた防犯カメラの映像。あれは多分、すり替えられていたんだ。カメラをハッキングして、警備員が廊下を歩いている様子を映してたんだろうね」
アジトに戻った海音が厳しい表情で言う。
「海音のハッキング技術を謀るとはな……」
相賀も険しい顔をして顎に手を当てた。
「伊月の仕業なの?」
ソファに腰掛けた瑠奈が訊ねる。
「だろうな。いたんだろ? 現場に」
「うん」
「少なくとも、警備員を指揮してたのはアイツだってことだ。実鈴はもっと正々堂々勝負するタイプだが……。伊月は捕まえるためなら手段を選ばないタイプなのかもな」
相賀が言うと、全員が重苦しい雰囲気に包まれた。
翌日。登校してきた相賀は、自分の席に座ってスマホを見ている伊月をそれとなく観察していた。
「ねえ、相賀」
ふと、瑠奈がやってくる。
「伊月がスマホの許可もらってるのって、実鈴と同じ理由?」
星の丘中学校は、スマホを持ってくるのは許可されているが、朝のHRから帰りのHRまでの間は使用が禁止されている。
「だろうな。探偵って言ってるし……」
二人が疑念の目を伊月に向けたとき、伊月が持っていたスマホが震えた。
「ああ、オレだ。……あ? わかった」
電話を切った伊月は机の横にかけていたバッグを取り、教室を出ていった。
「……あれ、どう見ても警察に呼ばれた感じじゃないよな?」
「そうだよね。……ほんとに探偵なのかな……」
二人は疑惑の念を拭いきれずにいた。
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