第25話 発見

 放課後。帰りのHRが終わってすぐに教室を飛び出した瑠奈と翔太は街中を走り回り、相賀を探した。


「相賀ーっ、どこー!?」


「木戸君! 返事してくれ!!」


 しかし、日が暮れるまで探しても相賀は見つからなかった。


「石橋君は、木戸君が行くところに当てとかないの?」


 公園で待ち合わせ、休憩していた翔太は尋ねた。


「うーん……。そういうところは粗方探したし……後は……」


 翔太は持っていた缶コーヒーを飲んだ。


「ところでさ、木戸君は好きなものとかないの?」


「相賀は……。あ、天体観測とか好きだよ」


「天体観測か……。プラネタリウムとかこのあたりにないの?」


「隣町にもないよ。もともとこの街全体がプラネタリウムみたいなものだし……」


 瑠奈の返答を聞いた翔太は腕組みをして考え込んだ。


「あ」


 突然、瑠奈が声を上げた。


「一箇所、探してないところがある。相賀のお気に入りの場所」


「それ、どこ?」


 翔太は食いつくように聞いた。


 空はもう暗くなり始め、一番星が光りだしていた。



 翔太は瑠奈に案内されながら小高い丘に来ていた。長めの階段を上がっていくと、滑り台や東屋が設置されている。公園のようだ。


「ここ隣町との境目なんだけどね、この公園街灯が夜九時には消えるから星がすごくよく見えるの。引っ越してきた相賀をここに案内したとき、すごく喜んでたんだよ」


「へー……。確かに、天の川まで見えるね」


 翔太は空を見上げた。


「でも、ここにもいないとなると……もう隣町にでも行っちゃったのかな……」


 瑠奈は丘の下に広がる隣町の灯りを見ながら言った。


「そうかなぁ」


 翔太は腑に落ちないという顔をして言った。


「木戸君、すごく葛藤してたんだと思うよ。石橋君が爆発に巻き込まれて危ない目に合って、もう巻き込めないと思ったけど石橋君がそんなの許すはずない。それはもう悩んだだろうね。だから……そんな軽率に町を出て行く訳ないんだよ」


(私……相賀を悩ませてたの……?)


 翔太は悩む瑠奈をじっと見つめた。


「別に、石橋君が悩む必要は無いよ。悪いのは全部一人で決める木戸君なんだから」


 そう言った翔太は当たりを見回した。そして、ある物に目を止めた。


「石橋君、木戸君は多分、そこにいるよ」


 瑠奈は翔太が指さした場所を見て目を丸くした。


 公園の街灯も消えた真夜中。相賀はある建物から出てきた。


「……誰もいないな」


 誰もいないことを確認した相賀はAのジャケットを羽織った。その時、何かの灯りが相賀に当たった。


「!?」


 相賀が慌てて振り返ると――瑠奈と翔太が立っていた。翔太が持った懐中電灯の灯りが相賀に当たっていたのだ。


「お前ら……!!」


 驚いた相賀はすぐには動けなかった。


「ほんとにいた……」


「ま、使われてないはずの防災備蓄がある倉庫のシャッターが少し開いてたら、誰だって怪しむさ」


 翔太は飄々と言った。


「なんで来たんだよ……。探すなって手紙に書いたろ」


「あんなので納得するわけないじゃん!!」


 瑠奈は相賀に突っかかろうとした。その時、


「石橋君!」


 鋭い声が飛んだ。


 ハッとした瑠奈が振り返ると、翔太がオッドアイで瑠奈を見据えていた。その瞳には、鋭い光が浮かんでいた。

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