SAME!!!!
烏丸焼
SAME!!!!
●ゲーム内世界・大航海時代風の船の上
プレートアーマーを着込んだチャラそうな顔の男がセクシーな水着を着た女にプレゼントボックスを渡している。
女「わあー♡ 本当にこのレアアイテムもらっちゃっていいんですか?」
男「いいよいいよ、僕くらいになるとこの程度いくらでも取ってこれるからね」
女「すごーい♡」
●ゲーム内世界・海中
水中に泡のように0と1の数字が漂っている。
水底から船を見上げるような構図。
●ゲーム内世界・船の上
書き文字『でーでん…』『でーでん…』
男「キミのその水着本当に可愛いね」
女「ありがとうございますー♡」
男「よかったらこれから一緒にクエストいかない?」
女「えー、あたしプレイ下手だから足引っ張っちゃうかもー」
男「大丈夫だよ、僕がチャットでアドバイスするから!」
書き文字『でーでん…』『でーでん…』『でーでん…』『でーでん…』
上空から船の上と海面を見下ろす構図。
海面に黒い大きな影が映る。
女「……あれ? エリア変わりました?」
男「そういえばBGMが……」
■改ページ
水しぶきを上げながら船より巨大なホホジロザメが口を開けて登場。
特大書き文字『SAME!!!!』
船が傾き男と女は体勢を崩す。
■改ページ
男と女「ぎゃあああああああ!」
SAMEが男と女ごと船の甲板を食いちぎる。
船を木片ひとつ残さず食い尽くすSAME。
食事を終えると海の中に帰っていくSAME。
なにも残されていない海は静かに凪いでいる。
■改ページ
●現実世界・オフィス
現代日本の一般的なオフィスビルのワンフロア。
壁に海と船、島々が描かれたポスターが貼られている。
ポスターのキャッチコピー『みんなに冒険を』『パシフィック・ブレイバーズ』
主人公・磨手院がパソコンの前で愕然とした表情をしている。
磨手院の外見はサラリーマン。ジャケットは着ておらず第二ボタンまで外したワイシャツを腕まくりしている。ネクタイは外してデスクに置いてある。
磨手院のキャラ紹介『海洋冒険MMORPG「パシフィック・ブレイバーズ」プログラムリーダー 磨手院』
磨手院「またSAMEか!?」
同僚の女性「はい。今月に入って8件目です。問い合わせはいずれも、違反行為をした心当たりはないとのことです」
磨手院「1件や2件ならまだしも、こうも続くとなるとしっかり確認しないとな……」
磨手院「了解した。広報チームに、検証結果次第では緊急メンテナンスもあるかもしれないと伝えておいてくれるか?」
同僚の女性「わかりました」
■改ページ
パソコンを操作する磨手院。
磨手院「AIは便利なんだけど、全部が全部機械任せってわけにはいかないんだよなあ」
ゲームのログイン画面。画面端に『Debug Mode』と表示されている。
●ゲーム内世界、南国の島
ログイン時のメッセージ『Welcome to PB’s World!』『Enjoy your Adventure!』
島の海岸に磨手院のアバターが出現する。
磨手院のアバターは現実の磨手院にライフジャケットを羽織らせた外見。
磨手院「さて……SAMEの餌食になったやつらを見にいきますか」
磨手院が海岸に向かって歩いていき、海に向かって右手をかざす。
■改ページ
磨手院の右手に0と1で描かれた鍵のマークが表示される。
海岸から海の底に向かって、光のレールが伸びていく。
磨手院が海の中に入り、レールに沿って海の底へと潜っていく。
レールは何カ所も枝分かれしており、分岐の先には『Save Data』『Enemy Data』などとプレートが付いた扉がある。
磨手院の目的の扉のプレート『Security AI Maintaining Environment』
■改ページ
●SAME管理室
扉の内側は天井や壁、床といったものがない空間が広がっており、悠然とSAMEが泳いでいる。
扉の直下にはコンソールが表示されているデスクがあり、磨手院はデスクまで下りていく。
磨手院「検索。直近1か月の規約違反及びプレイヤーデータ没収処分の履歴」
コンソールに細かい文字列が表示される。
磨手院「ええと……規約違反コード007-o-981……」
磨手院「2人目は……コード007-o-981」
次第に怪訝な顔をしていく磨手院。
磨手院「3人目は……007-o-981。おいおい、まさか全員同じじゃないだろうな」
時間経過。
磨手院「8人全員が同じ規約違反コードでSAMEに食われたのか。偶然で済ますのは無理だなこりゃ」
■改ページ
SDキャラによる設定の図解。モブが「不正」と書かれたプレゼントボックスを手に喜んでいるのを、眼鏡をかけたSAMEが水中から観察して頭上に「!」を浮かべている。
「不正」と書かれたプレゼントボックスを持った複数のモブにSAMEがそれぞれ襲い掛かっている。
磨手院のモノローグ「SAMEの基本的な仕組みは、ゲーム内で発見した違反行動のパターンを学習し、それに一致する行動をとったプレイヤーのデータを没収するというものだ」
磨手院がコンソールの前で顎に手を当て考え込んでいる。
磨手院のモノローグ「1か月で8人、全く同じ違反をする人間が連続して現れるなんて普通はない」
磨手院のモノローグ「プレイヤーの間でなんらかのチート行為が流行しているか、SAMEがプレイヤーの一般的な行為を違反行動と誤学習してしまったか」
磨手院が顎に当てていた手を下ろし太ももを叩く。
磨手院「どちらにしても、早急な対応が必要だな」
■改ページ
磨手院「管理者権限により、規約違反コード007-o-981により凍結されたプレイヤーデータを臨時解凍」
空間を泳いでいたSAMEが磨手院に近付き、口を大きく開く。
ゲロを吐くようにSAMEの口から8体のアバターが吐き出される。
吐き出されたアバターの外見はハイファンタジー系、現代カジュアル系、SF系など統一感がない。冒頭でSAMEに食われた男女もいる。アバターの体は錨のついた鎖で縛られている。
■改ページ
磨手院「臨時解凍データ内を検索。規約違反コード007-o-981に抵触した行動ログ」
横たわるアバターの上にそれぞれウィンドウが現れ、ウィンドウ内にそれぞれのアバターがゲーム内のフィールドに立っているスクリーンショットが表示される。
磨手院「……なんだこれは? ただ立っているだけじゃないか。これのどこが違反行動なんだ?」
磨手院が表示されたスクリーンショットの一つに触れると、ポップアップしてアクセスログが表示される。表示されているログの中央付近の数十行がマーカーで強調されている。
■改ページ
磨手院「高速でメニュー画面の開閉を繰り返している……? その行動に何の意味が……?」
磨手院がいぶかしみつつログを凝視する。タイムスタンプがコンマ数秒の短い間隔で連続している。
磨手院「このスピードは明らかに人の手による操作じゃない。なんらかのプログラムで動いている」
磨手院「外部プログラムによるゲームの操作は利用規約で禁止されている……SAMEが反応したのはこれか」
磨手院「チート目的とは考えづらい……バグなら外部プログラムによる操作には当たらない……ゲームプレイヤーを狙ったウイルスか?」
■改ページ
●現実世界・オフィス
磨手院がパソコンの横に積まれた書類の束を手に取る。
書類のタイトル『コールセンターへの問い合わせ記録』
磨手院がペラペラと書類をめくっていく中、数枚目の『備考欄』に目が留まる。
備考欄『トゥイッターで募集されていた非公式のアイテムプレゼントキャンペーンに参加』
磨手院(8人中5人がこれに参加している……もしこれがウイルスの拡散元だとしたら……)
磨手院がパソコンの画面上にTwitter風のSNSの画面を表示する。
■改ページ
ツイート風画面『PBアイテムプレゼントキャンペーン!』『RT数に応じて参加者に豪華アイテムをプレゼント!』『RT:1万3000 ☆:5800』
磨手院「すでに1万3000人がウイルスに感染している可能性がある……!」
磨手院が危機感に満ちた表情でデスクから立ち上がる。
●現実世界・会議室
磨手院のほかに、数名のゲーム運営責任者が会議室にいる。
磨手院「……報告の通り、PBのプレイヤーをデータ没収措置に追い込むための悪意あるウイルスが拡散している恐れがあります」
磨手院「私は、警察にこの件を不正アクセスの疑いで通報すると同時に、このウイルスに対応するための大規模アップデートを早急に行うことを提案します」
■改ページ
磨手院の発言に、会議参加者は渋い顔をする。
広報部長「警察かあ……大事になると、ゲームの評判がなあ……」
ディレクター「大規模アップデートにはどれくらいの期間が見込まれる?」
磨手院「1週間……長くて2~3週間ほどでしょうか」
イベント運営部長「それはだめだ。リリース1周年記念イベントと重なっている。イベントへの期待も高まっている。延期はできない」
磨手院「ですが! このままでは多数のプレイヤーがSAMEの餌食になるんですよ!?」
ディレクター「まあ待ちたまえ。放置できない問題であることも事実だし、今の時期にサービスを長期間止めることができないのも事実だ」
ディレクターが厳然とした顔で口を開く。
■改ページ
ディレクター「まず、ウイルスに関する通報は、警察ではなく契約しているネットセキュリティ会社に行う。それでも対応は可能なはずだ」
ディレクター「そして、ゲーム内でのウイルスへの対応は、SAMEを規約違反コード007-o-981に反応しないように設定を書き換えることとする。これでこれ以上SAMEに襲われるプレイヤーは現れないはずだ」
磨手院「それでは問題の根本的解決にはなりません!」
ディレクター「君の心配も理解できるが、病巣を摘出している間に心臓が止まったのでは笑い話にもならない。わが社はそこまで体力のある会社ではない。ここは対症療法で納得してくれ」
磨手院「わかり、ました……」
■改ページ
●ゲーム内世界・SAME管理室
磨手院の前に鎖で縛られた8体のアバターとSAMEが並んでいる。
磨手院「こうするしか、ないのか……」
磨手院「管理者権限によりSAMEの設定を編集。規約違反コード007-o-981を誤学習によるエラーと設定。同コードにより凍結されたプレイヤーデータを解凍」
アバターを縛る鎖が消滅する。
磨手院はアバターに背を向け、デスクのコンソールに向き直る。
SAMEが泳ぎ去ると同時に、アバターのうち4人が消滅する。残りの4人がデスクに座る磨手院に少しずつ忍び寄ってくる。
磨手院「さて、セキュリティ会社への報告書をまとめないとな……」
磨手院「それにしても、気味が悪い案件だな……」
忍び寄るアバターの手が磨手院に伸びる。
■改ページ
4人のアバターに羽交い絞めにされる磨手院。
磨手院「な!?」
●現実世界・オフィス
磨手院のパソコンの画面に大きな警告マークとメッセージが出る。
メッセージ『このPCは現在クラッキングを受けています!』
磨手院「なんだと!?」
磨手院が素早くキーボードを叩く。
■改ページ
●ゲーム内世界・SAME管理室
4人のアバターのうち1人が磨手院を羽交い絞めにし、3人の前にはコンソールが表示されている。コンソールには『Downloading…』の文字が表示されている。
磨手院のアバターはクラッキングによる過負荷のためノイズがかかる。磨手院の右手に0と1で描かれた鍵のマークが表示されている。
コンソールに『Complete!』の文字が表示される。
アバターABCの右手に磨手院と同じ鍵のマークが現れる。
アバターA「よし、管理者権限を手に入れたぞ。こっからが本番だ」
アバターB「やってやろうぜ」
アバターC「ああ」
アバターABCがSAME管理室の扉から外へ出ていく。磨手院と羽交い絞めにしているアバターが取り残される。
磨手院がアバターの腕を掴む。
■改ページ
磨手院がアバターを引き倒す。
磨手院「おらあ!」
床に引き倒されたアバターは羽交い絞めの姿勢のまま動かない。
磨手院「Botに足止めされてる間に管理者エリアに入られたか」
磨手院「異常行動はダミー、管理者エリアにクラッキングするのが本当の目的か……!」
●現実世界・オフィス
磨手院「おい! 今リアルタイムでPB内に異変が起きてないか調べてくれ!」
同僚の女性「りょ、了解です!」
パソコンにSNSの検索画面が表示されている。検索ボックスには『#PB』と入力されている。
■改ページ
同僚の女性「確認できました! 現在PB内でレアアイテムのドロップ率が異常に高くなっているとの情報が複数あります!」
同僚の男性「こちらでも、プレイヤースキルの威力が突然高くなったとの投稿を確認しました!」
磨手院「くそっ、やられたな……!」
磨手院のデスクにディレクターが近づいてくる。
ディレクター「すまなかった。私の判断ミスだ」
磨手院「責任うんぬんを言うのはやめましょう。今はこの事態を収束させることが先決です」
磨手院「大勢の善良なプレイヤーのためにも、クラッカーにこのゲームを好きにさせるわけにはいかない」
■改ページ
ディレクター「SAMEの設定を元に戻すのはどうだ?」
磨手院「ウイルスに感染している他のプレイヤーまで巻き込まれます」
磨手院「犯人の厄介なところは、自分のデータだけでなくゲームシステム全体のデータを書き換えたことです。おかげで犯人のアバターが特定できない」
ディレクター「では打つ手なしか? 一度サービスを停止するしかないならそうするが……」
■改ページ
磨手院が凶暴そうに目をぎらつかせて笑う。
磨手院「まさか。こんな連中のためにプレイヤーに迷惑をかけてたまるもんですか」
磨手院「30分で片をつけてやりますよ」
●ゲーム内世界・船の上
アイテムボックスが甲板の上に大量に散らばっている。その中でアバターABCが笑っている。
■改ページ
アバターB「いやあぁー改造プレーマジ気持ちいいなあぁー! アイテムががっしゃがっしゃドロップするぜ!」
アバターC「ボスエネミーもワンパンだもんな! 俺ツエー最高!」
アバターA「課金させてえからって色々設定絞りすぎなんだよな! 遊んでやってる側の気持ちを考えろってんだ!」
アバターA「さあ、次はどこを改良してやろうか」
アバターB「エリア間の移動時間だるくね? ワープできるようにしようぜ」
アバターC「俺たちのおかげでPBがどんどんいいゲームになっていくな!」
■改ページ
広い海の上に、船はアバターABCの乗る船以外存在しない。
アバターC「あれ……?」
アバターA「どうした?」
アバターC「いや、このエリアはレアアイテムのドロップ増やしたのに、他のプレイヤーが集まってないなって」
アバターB「まだトゥイートが拡散してないんじゃねーの?」
書き文字『でーでん……』『でーでん……』
海面に黒い大きな影が現れる。
アバターC「みんなアンテナ低いなー。最新情報はしっかりチェックしないと」
アバターA「っていうか、BGM変わってるな。エリア移動したのか?」
アバターB「いや、俺は触ってないけど……」
書き文字『でーでん……』『でーでん……』『でーでん……』『でーでん……』
海面の影から背びれが伸びる。
■改ページ
SAMEが海中から口を大きく開けて出現。
特大書き文字『SAME!!!!』
■改ページ
アバターA「SAME!?なんでSAMEが!?」
アバターB「俺たちはもう襲われないんじゃなかったのか!?」
アバターCがロケットランチャーを構える。
アバターC「今の俺たちは最強なんだ! SAMEなんか怖くねえぜ!」
アバターCがロケットランチャーを発射、SAMEに直撃する。
SAMEの顔が爆炎で見えない。
アバターC「はっ、こんなもんかよ」
■改ページ
SAMEが爆炎の中から飛び出し、アバターCに襲い掛かる。
アバターC「うわああああああ!?」
アバターCが甲板ごと食いちぎられ、船が傾く。
アバターAとBが船から飛び降りる。
SAMEが船を食い尽くしていくのを背に、アバターAとBは水上バイクに乗ってその場を離れる。
■改ページ
アバターA「どういうわけかわからねえが、SAMEは俺たちを狙ってる! 一旦ログアウトだ!」
アバターAとBの眼前にポップアップウィンドウが表示される。
ウィンドウのメッセージ『現在メンテナンス中です。ログイン・ログアウトはできません』
アバターB「出られねえ! なんでだ!?」
アバターA「メンテだと!? トゥイッターに告知は出てねえぞ!」
●ゲーム内世界・SAME管理室
デッサン人形のような即席感のあるアバターがデスクのコンソールを操作している。コンソールのウィンドウにはSAMEから逃げるアバターAとBの姿が映っている。
■改ページ
人形アバターの顔の横に現実世界の磨手院のカットインが入り、人形アバターの中身が磨手院だと示唆する。
磨手院「考えが甘いんだよひよっこ共。クラッカーが管理者権限を持ってるなら、管理者権限を持っているやつを違反者と認識するようにSAMEを調整すればいいだけだ」
磨手院「やんちゃする場所を間違えたな。うちの海で好き勝手やろうとした報いを受けてもらおうか」
●ゲーム内世界・島の海岸
アバターAとBが水上バイクを乗り捨てる。
アバターAとBが島の中のゲストハウスに逃げ込む。
■改ページ
●ゲーム内世界・ゲストハウス
アバターAがゲストハウスの一室でコンソールを開く。
アバターA「管理者権限を使ってログアウトのためのバックドアを開く! お前はデコイを使って時間を稼げ!」
アバターB「わ、わかった!」
アバターBが部屋から出る。アバターAがいる部屋は2階で、ドアの前からゲストハウスのエントランスホールが見える。
アバターBがエントランスホールに向けて焦った表情で両手をかざす。
アバターBの両手から大量のプレゼントボックスが出現する。
■改ページ
エントランスホールがプレゼントボックスで埋め尽くされる。アバターBの上斜め後ろから見下ろす構図。
アバターB「ふう……」
アバターBが安心した表情で額の汗をぬぐう。下から見上げる構図で天井が見える。
■改ページ
SAMEが天井を突き破って大きく口を開けてアバターBに向けて落ちてくる。
特大書き文字『SAME!!!!』
ゲストハウスの部屋で作業しているアバターAのところにアバターBの悲鳴が届く。
アバターB「ぎゃあああああああ!」
■改ページ
アバターAが焦った顔でコンソールを操作する。
アバターA「くそっ……。だが、これで……!」
アバターAがエンターキーを叩く。
アバターAの目の前の空間に黒い穴が広がっていく。
アバターAの口角が上がる。
アバターA「これで、逃げられる……!」
アバターAが黒い穴に向かって歩き、手を伸ばす。
■改ページ
アバターAの手が黒い穴の中から伸びた人形の手に捕まれる。
人形の手に掴まれた場所から侵食するようにアバターAの全身にノイズが広がっていく。アバターAの体が動かなくなる。
アバターA「なっ……!?」
磨手院の人形アバターが穴の中からぬっと出てくる。
磨手院「はーい。残念でした。逃げられませーん」
アバターA「う、動かねえ……」
磨手院が穴の中から完全に出てくると、穴が消滅する。
■改ページ
磨手院「ちょっと人より賢いからって調子に乗りすぎたな。こちとらプロだぞ。お前ら程度にできることが、俺にできないわけないだろうが」
アバターAが悔しそうに顔を歪める。
アバターAが開き直った顔で吐き捨てる。
アバターA「けっ、運営様が上からもの言ってんじゃねえよ! お客様がわざわざバランス糞のゲームを改良してやったんだ! 感謝しろよ!」
磨手院「余計なお世話だ糞野郎。このゲームはみんなが楽しむためのものだ。好き勝手やりたいんなら人の作ったものにミソつけるんじゃなくて自分でゼロからゲームを作るんだったな」
磨手院の背中側から悔しそうな顔のアバターAが見える構図。
磨手院「お前らのせいで大勢の人に迷惑がかかったんだ。落とし前をつけてもらうぞ」
■改ページ
SAMEが部屋の壁を破壊して大きく口を開けてアバターAに背後から襲い掛かる。
特大書き文字『SAME!!!!』
■改ページ
アバターAの顔に影がかかり、まさにSAMEの口に飲み込まれようとしている瞬間。
アバターA「くそあぁ……!」
SAMEの顎が閉じられ、磨手院に握られているアバターAの腕の手前までが飲み込まれる。
磨手院「ふう。一丁上がり、と」
磨手院がアバターAの腕をSAMEに向かって放り投げる。
SAMEがアバターAの腕を食べる。
磨手院がSAMEの頭を撫でる。
磨手院「お前もお疲れさん」
■改ページ
●現実世界・オフィス
ナレーション『数日後』
磨手院がデスクで新聞を読んでいる。
新聞の見出し『人気ネットゲームに不正アクセス 三人逮捕』
磨手院がマグカップからコーヒーを飲む。
磨手院「やれやれ。ゲームの中の海でくらいマナーを守れないもんかねえ」
同僚の女性「無理だと思いますよ。現実の人の目があっても守れないんですから。いわんやネットの中でをや、です」
同僚の男性「まあ、そういうやつらがいるから俺らの仕事はなくならないんですけどね」
■改ページ
磨手院「マスコットAIに芸を仕込む仕事にでも就きたいよ、俺は」
同僚の女性「そういえば、セキュリティAIの外見をサメにする案を出したのって磨手院さんでしたっけ。どうしてサメなんですか?」
磨手院「どうしてって、そりゃあ……」
磨手院がいたずらっぽく笑う。
磨手院「海のマナーを守らない糞野郎がサメに食い殺されるのは痛快だろう?」
完
SAME!!!! 烏丸焼 @shokarasuma
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます