青赤の目

 この後私達は女将さんを担ぎ、大急ぎで旅館の離れた場所にある母屋に女将さんを布団に寝かせた後警察に連絡をしようと番台の受話器を取ってダイヤルを回した。雪は降ったばかりなので電線には問題なく繋がった。

「もしもし警察ですか?殺人があったんです。すぐ来てくれませんか?」

 次の言葉に私は落胆と焦りがでた。

「どうしたんですか?暗い顔をしてますけど」

「どうやら近くで落石があって、しばらくの間こちらに来られないらしいです。」

 彼は大きなつばを飲み込んだ。しばらく静けさが続いたがお互いに思ったことは一緒である。

「つまり警察が来るまで殺人鬼と一緒に過ごす!?」

 彼らにはそれが恐怖でしかなかった、人を斧で割るだけではなくひとふりで顔を潰す冷酷な殺人鬼が私達としばらくの間共同生活をしなければならない、しかも次殺されるのは自分かもしれないと思い、落ち着かないのである。いや、この旅館に宿泊している客が今のことを聞けば大騒ぎするのは間違いない。

 するとミシミシと気が軋む音が聞こえた、スッと私はその方を向くと手摺を掴みながら下りる一人の女が目をキョロキョロさせながら、こちらの様子を伺っている。

「叶絵!?起きたのか」

「だって起きたらあなたがいないんだもの。そしたら下から頭の声が聞こえたから、、、、、。あなたは確か」

 私と彼女は一度入浴場を出た時バッタリ会った事があり互いに面識あったが、ただそれだけで話したことはない。

「知り合いか?」

「入浴場から出た時会った事が、、、。」

「ねぇ、何があったの?」

「実は、、、」

 旅館の亭主が裏の薪割り場で殺されている事、警察が来れない事を言うと

「本当なの!?ねぇ私嫌よ殺人犯と一緒に過ごすなんて、茂さん私を守ってくれますよね。」

「大丈夫、必ず守るから」

 すると階段の上からゾロゾロと老若男女の数人が下りて来て叶絵と同じことを聞いて、同じ事を言っているため私は彼らを静めることしかできなかった。

「じゃぁ交番に行かないといけないじゃない」

「それは後で行くので」

 随分ごった返しになってしまって、行くにもいけないのだ。

「きゃっ」

 すると表の方からまたしても女の声が聞こえて全員がバタバタと駆けつけたとき作業服を着た妙子が石段の途中で腰を抜かしている。

 すると左の薔薇の花庭から一人の男が立ち上がったその時男の顔を見た時私を含めて集まった者たちは驚きと恐怖を隠せなかった。

 黒いマントに黒いシルクハットを着た男は仮面を被って口角を上げながらニヤニヤと、私達を嘲笑うかのように笑っているのだ。しかも目元からは青い目と赤い目がずっと覗いている。

 すると男はくるりと方向を変え、門を潜って行った。

 一体あの男は何者だろうか?

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薔薇の花園 鷹島隆夫 @yuureiyashiki

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