22、ついに到着した火大陸では、武装した船が守りを固めているようです
「
「父の意思に背く行動を取ると、頭に激痛が走るそうです。父しか解除はできず、彼が生きている限り、
「今ここにいるということは、メレウトさんは
レモの問いにメレウトさんはうなずいた。
「僕は先祖返りの恩恵か、父と同等の力を持っているせいか、父の
メレウトさんもなかなかの
レモが首をひねりながら、
「シャーマンが使う
他人の振りを貫き通したクロリンダを例に出すと、俺の姉ちゃんも、
「私の
と話に加わった。
「ということは、もしかしたら――」
人差し指を立てたのは師匠だ。
「ジュキくんの
「師匠の言う通りよ」
レモの声は確信に満ちていた。
「ジュキは姉のギフト<
そんなこともあったな。レモと会ったばかりの頃に、彼女の生家であるアルバ公爵家でミニコンサートを開いたのだ。
半年近く前のことをなつかしく思い出していたら、メレウトさんが遠慮がちに口をはさんだ。
「すみません、皆さん。ギフトとはなんでしょう?」
聞けば火大陸にはギフトという概念そのものがないそうだ。とはいえ親から子へ受け継がれるシャーマンの能力は、水の大陸でギフトと呼ばれる力と非常に近いだろう。
師匠とレモが代わる代わる説明をすると、メレウトさんは興味深そうに俺を見た。
「人の心に大きな影響を与える力が歌声に宿っているというのはおもしろいですね」
「俺の母さんがセイレーン族だから、その能力を受け継いでるみたいなんだ」
話し合いの場にペセジュ船長がいなかったのは幸運だ。彼女に歌った子守唄に意図があったと思われたくないからな。ペセジュ船長は甲板で、船員たちに指示を出している。
「とはいえジュキくんが
師匠が冷静な意見を差し挟み、レモに向き直った。
「レモさん、我々は当初の予定通り聖魔法開発を進めましょう」
「いやぁ、すごいですね!」
メレウトさんの興奮した声に彼の方を振り返ると、髪の毛が一房立ち上がっている。もしかしたら冠羽なのかも。
「不死の相手さえ斬れる聖剣に、
「でしょ?」
冗談めかして答えてから、レモはいたずらっぽく付け加えた。
「魔法の方は、今から師匠と開発するんだけどね!」
三日後、レモと師匠の新魔法が完成したころには、真っ青な空とコバルトブルーの海が交わる境界線に、ぼんやりと霞がかった火大陸の輪郭が見えてきた。
大海原が映し出す目的地を前にして、ウム族の人々は甲板から身を乗り出していた。
「故郷だ!」
「帰ってきたぞ!」
「なつかしいなあ」
頬を撫でる海風が、彼らの心に新たな希望を吹き込む一方で、
「本当に上陸するのか?」
「また鳥人族に攻撃されるのでは?」
夢の中の幻影のように彼らを待ち受ける大陸の姿に、おびえる人々もいる。
ペセジュ船長の表情もややこわばってはいたが、彼女はつとめて冷静に振舞っているようだ。
「ジュリア、見てくれ」
俺を手招きして望遠鏡をのぞかせた。
「どうやら我々は歓迎されているようだ」
彼女は皮肉たっぷりに笑った。
望遠鏡が映し出す小さな円の中には、入り江をふさぐようにずらりと武装した船が並んでいる。
「守りを固めているみたいですね。あれが鳥人族?」
「おそらく鳥人族に命じられた現地の人々だと思います」
答えたのはメレウトさんだ。俺から望遠鏡を受け取って入り江へと向ける。
「あの入り江はウム族の集落があった場所ですね?」
「そう、我々の故郷だよ。あの切り立った崖から向こうは――」
ペセジュ船長は向かって右手にそびえたつ岩を指さした。
「――レム族の集落なんだが、あっちは岩場で船をつけにくいから、敵も入り江に集中して上陸を阻もうと待っているんだろう」
メレウトさんから望遠鏡を借りて、レモも入り江を見つめながら、
「私たちが今日、到着するなんて分かるはずないのに、常に船を出しているのかしら?」
「父が予言したんでしょう」
メレウトさんの言葉に驚いて、全員が彼を見た。
「ゲレグ族長って予言までするのか?」
俺の問いに、
「シャーマンですから」
さも当然といった口調のメレウトさん。俺が彼を倒しに行くことも知っているのか。胸の鼓動が次第に速くなる。
だがレモは不敵な笑みを浮かべた。
「ゲレグ族長は、自分がジュキに倒される未来も
「そうだよな!」
勝利を信じて疑わないレモの言葉が俺を勇気づけた。
「ゲレグが
「その意気よ、ジュキちゃん!」
姉ちゃんがうしろから俺を抱きしめたところで、
「皆さん、そろそろ臨戦態勢に入りましょう」
師匠が声をかけた。
─ * ─
ゲレグ族長の予言に従って守りを固めている火大陸へ、どうやって上陸するのか!?
次回、火大陸上陸作戦、開始です!
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